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コラム


「ジャパン・ブルー」

 田植えが終わって1カ月。近所の田んぼも、ずいぶん緑が濃くなった。田んぼに放たれた合鴨も元気に泳ぎまわっている。この時期いつも思い出すことがある。少年時代の「農繁休暇」。田植機がまだ普及していない時代、町の子も、村の子も、田植えに駆り出される。田植えのアルバイト賃で野球のグラブをはじめて買った。かくして野球小僧の誕生。
 野球は大リーグのチャンピオンを決める試合をワールドシリーズといっているが、アメリカ一国の話。サッカーのワールドカップは、単一のスポーツイベントとしては、世界最大規模。なにしろ、FIFA(国際サッカー連盟)に加盟している協会の数は204、国連に加盟している国の189カ国より多い。そのなかから、32カ国だけが出場する。テレビの視聴者数は延べ420億人、地球人口60億人の7倍にものぼるといわれる「世界最大の祭典」、文字通りワールドカップ。
 野球とサッカーは、同じ球技でありながら、なぜサッカーが世界的な人気スポーツなのだろうか?大橋巨泉が朝日新聞のコラムで、「サッカーが世界的なのは、金がかからない。金持ちも貧乏人もない。ボール1個あれば、遊べるからだ」と述べている。その点、野球はバットとグラブ、ボールもいる。グラブ1つ手に入れるのに、農繁休暇、1週間の労働が必要だった。
 もう1つ、野球とサッカーを農耕民族と狩猟民族の違いに例える説がある。サッカーは攻撃的な狩猟民族にむいているが、日本のような農耕民族は、野球のようなちんたらスポーツがむいていると。これは日本でサッカーの普及が遅れた言い訳の1つだが、たしかに、サッカーは足でボールを蹴り、一目散にゴールをめざす攻撃的なスポーツ。野球のように、攻めと守りを規則正しく繰り返している暇はない。
 ともあれ、21世紀初の、アジアで最初の、史上初めての2カ国共催のワールドカップが1カ月間展開される。日本代表が初勝利をあげ、決勝トーナメントにすすめるだろうか。その初戦、「赤い悪魔」のベルギー戦、会場は「ジャパン・ブルー」に染まったが、惜しくも2:2の引き分け。後は神のみぞ知る。 (だだっ児)


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