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コラム


先達の憂い

 先日、ある会合で懐かしい顔に出会った。いきなり「農家は、今まで、日本の食糧(料?)産業を担っているという、自負のもとでやってきた」、「国はどんどん農業から手を引いている。これからは、だれが農家を守るのか」と、勢い込む。
 新潟O農協の元組合長、営農指導員から組合長、県連役員をしてきた先達。農家を守るのは農家、その営農を支援するのは農協、大元は国という考え方のようだ。
 それが、先の食糧庁の生産調整研究会の「中間とりまとめ」をみても、食糧産業を担っている農家をきちんと守るどころか、ブルドーザーで農家をなぎ倒すような政策だと、憤慨する。
 つい最近、この6月に組合長を辞めた北陸の先達から「これからは、先祖からお預かりしている農地と山林を相手に余生を過ごしたいと考えています」という便りが届く。
 折りから、武部農相は、農地法を抜本改正すべく動き出した。農地法は、「土地を耕作する者だけが農地を所有できる」という、「耕作者主義」を精神としている。その規制を緩めて株式会社など企業の参入を促進するねらい。この人の頭の随には、先の「改革か、さもなくば解体か」の発言にみるように、農村社会の破壊しかないようだ。
 今にも、二人の先達が「先祖からお預かりしている大事な農地をだれが、株式会社なんかに譲ろうぞ」、「農家が日本の食糧産業を担っていないというなら、もう人様の食糧なんかつくらない」と、悲憤慷慨しかねない事態。
 そんな中、全中の新しい会長に北海道の宮田氏が登場する。宮田会長候補のスローガンは「農の心を取り戻そう」。日本人は平和ぼけしていると言われる。今の日本人のほとんどは、二人の先達のように、食糧不足の経験もない。農業体験もない。そんな平和ぼけの頭には、農業の価値が心底分からない。生産者も消費者も、すべての国民が「農の心」を共有しないと、農業はもちろん日本がほんとうにダメになる。 (だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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