「仮想水」
8月1日が「水の日」であることも、この日からの1週間が「水の週間」であることも、今まで知らなかった脳天気。水の使用量が年間で最も多いこの月の初めに、水の大切さを考え、節水の意識を高めようという大切な週間なのに…。
地球は、表面の約7割が水で覆われる「水の惑星」といわれるが、そのほとんどが海水。人間が利用可能な淡水は、わずか0.01%に過ぎず、その希少さから「ブルー・ゴールド」と呼ばれているくらい貴重。このため、20世紀は「石油」をめぐり、21世紀は「水」をめぐる国際紛争が起きるとも言われるほど、水問題は深刻。
日本の場合、年間1700ミリの降雨量(世界平均の2倍)があり、一見、水は豊富にみえるが、急峻な地勢のせいか、量的には世界で100番目以下とか。しかし、あまり水不足を感じさせないのは、日本の場合、川から水田に引いた水が、川に戻り、その水がまた、再利用されるというように水が循環利用されているからだと言われる。
水といえば、最近「仮想水」という言葉をよく目にする。これは、「食料などを輸入することで、間接的に輸入している水のこと」とある。例えば、朝食にパンとハムをはさんだ目玉焼きを食べたとしよう。パンの原料である小麦やハムや卵のもとである豚や鶏の餌にしても、ほとんどが外国産の麦やトウモロコシ。これらの食材を生産するためには、多量の水が使われている。これを直接目に見えない水、「バーチャル・ウォーター」=「仮想水」というそうだ。
総合地球環境学研究所・東大生産技術研究所の沖助教授がその「仮想水」を見る大切さを説いている。沖氏は、ファストフードの牛丼1杯にしても、その食材の米と牛肉を生産するには9トンの水資源を要すると具体的に換算。この計算でいくと、世界最大の農畜産物の輸入国、日本が輸入する「仮想水」は、640億トン、琵琶湖の貯水量の4倍近くもなり、世界1位ではと指摘する。日本国内の農業用水使用量と匹敵する水を輸入している計算になるというから驚く。
食料自給率がわずか40%、外国の食料を漁る日本は、その意味で地球規模の水不足の真犯人かもしれない。何より、「水田はダムである」「日本国家の基盤は米づくりにある」と唱える、彼の富山和子氏のいうように、米づくり、農業を放棄すると、その土台の上に構築された日本文化、いや、日本国家そのものが危うくなるのではと心配になる。(だだっ児)
(2003.8.19)