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コラム

「ベン&ジェリー」

 「ジャック&ベティ」は、昔、中学校で習った英語のテキスト。「ベン&ジェリー」は、アメリカ・バーモント州のアイスクリームの名前。このアイスクリームは、格別に安いわけでも、格別にうまいわけでもないそうだが、爆発的に売れ、今や、ハーゲンダッツと並ぶ世界的ブランドに成長。なぜ?
 このアイスクリームには、容器1つ1つに次のマニフェストが書いてあるそうだ。「私たちはバーモント州生まれのメーカーだ、バーモント州の零細な酪農家以外から原料は買いません」と。たったこれだけのことが消費者に強くアピールし、需要のパイが膨らんで企業はみるみる大きくなったという。要するに、アメリカの貪欲に利潤追求するマネー資本主義とは、反対の生き方をする理念型企業(利潤追求だけを第一義としない企業)が、消費者の支持を得て成長した事例だという(以上は、内橋克人さんの「もうひとつの日本は可能だ」から)。
 また、同著で内橋さんは、ベン&ジェリー社の「3つの使命」を紹介している。1つは「商品の使命」、商品に絶対の責任をもちたい。2つ目は「社会的使命」、零細な酪農家を支援したい。3つ目は「経済的使命」、従業員に報いたい、将来のために研究もしたい、だから適正な値段、価値に相応しい対価を支払って下さい、である。このアピールに賛同する自覚的消費者(安値だけを追い求めない顧客)が、たかが(失礼)アイスクリームをつくるメーカーが世界的な企業になった理由だと氏は分析する。
 この同社の「商品責任」「社会的責任」「適正利益」の3つの使命は、そっくりJAグループの使命に置き換えることができよう。販売する農畜産物には、絶対の責任をもちたい。日本人の主食である米をつくりつづけ、消費者にきちんと届けたい。いや、米をつくること、農業をつづけることで、「水」を貯え、国土を守りたい。そして、農家の営農の労苦に報いたい。このために、適正な値段、対価を支払って下さい。となろうか…。
 残念ながら、わがJAグループは、このアピールが決定的に不足しているように思う。「JAグループの使命」とは、明らかにベン&ジェリー社のこの3つ。高らかに、これを内外に宣言し、実行する。どこかの首相のように「公約なんか大したことでない」ではダメ。これこそが自覚せる消費者の共感を呼び、揺るぎない日本農業となる唯一の道ではないだろうか。

(だだっ児) (2003.9.1)

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