夏が1カ月ずれている。9月に入って、異常な暑さが連日つづく。空を見上げると、高くなった天は鱗雲、低い方は入道雲。空は夏と秋が混在、季節の移ろいに迷いをみせている。9月半ばの連休、近所の田んぼは一斉にコンバインが入り、あらかた稲穂は消えてしまった。農家の人に出来具合を聞くと「マアマア」という。
今夏、東北に3度行った。7月中旬、青森・岩木山にでかけたが、雨で登山は断念。7月末に岩手、9月の初め宮城を訪れたが、冷夏の影響は予想以上。「不稔率は49%、半作」、「生育は遅れきって、どうしようも無い」と、あるJAの営農部長。でも一人の農家は「収量は減るが、品質は落とさない」と、気丈夫。
こんな不作が決定的な中でも、JAも、県本部も「売れる米」づくりとして、掲げた基本姿勢は崩さない。トレーサビリティ(生産・流通履歴の遡及システム)の元になる「栽培履歴の記帳」や、倉庫等における分置管理、DNA鑑定、残留農薬の検査などは、手を緩めずに進めるという。こんな健気な農家や、真面目な農協組織が基盤にあってこその“日本”の意を強くする。
話は変わるが、通勤帰りによく手にする新聞が夕刊フジ。政治、経済、芸能スポーツと幅広く、情報通になること請け合い。なかでも、植草一秀氏(早稲田大学教授)の経済批評はよくあたる。株価が7000円台のとき、ここは底値、後は、時計の振り子と同じで上がると言っていたが、そのとおり1万円台まで回復。
また、植草氏が言うに、今年は10年前の1993年に似ているという。記録的な冷夏と政変だ。10年前、冷夏で「平成米騒動」が起き、夏物商品が売れず、景気は低迷。政治の世界では、自民党は野党に転落し、細川連立政権が誕生した。今年も、民主党と自由党が合併し、次の衆議院選挙で与野党が入れ替わる可能性がある。最悪のシナリオは、小泉政権がつづくこと。そのときは日本経済の復活はないと氏は言う。
その小泉首相、自民党総裁に再選され、10月に衆議院解散、11月に総選挙と打って出る。かの首相は、この3年間、構造改革とやらで、国民に痛みを強要、リストラで青テントが林立、自殺者は激増、商店街はシャッター通り、米政策改革とやらで、米を市場流通に曝し、農協組織を株式会社論でなで斬りにする。10年前と似て冷夏、そして、政変劇もあるぞよ。だって、「ダメトラ」阪神が優勝するぐらいだもの…。