農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
トーリ監督の慧眼

 5月の連休前、福岡、佐賀を訪れた。さすがこの地は麦作地帯、田園が青い海原に染まっている。なんでも、佐賀辺りは、生産調整をしていることもあって、米よりも麦のほうが作付面積は多いそうだ。一方、我が住む関東平野は連休中に一斉に田植えが終わり、「水の国」に一変。いよいよ米づくりの開幕である。
 話はプロ野球に…開幕してから1カ月余りたったが、戦前の予想に反して、セ・リーグは巨人がもたつき、首位から最下位まで僅差の団子レース。選手では、広島カープの「赤ゴジラ」こと嶋外野手と、4月に18本のホームランを放った巨人の阿部捕手の活躍が目立った。とくに、嶋選手は、投手から野手に転向した10年目の選手。昨年のオフには解雇寸前にまで追い込まれたが、背番号を「00」から「55」に変えて心機一転、みごと大輪の花を咲かす。
 一方、本家「ゴジラ松井」のいるヤンキース。巨人同様、投手陣の不安から大型攻撃陣を控えながらもたついている。松井選手も巨人時代のスラッガーからすっかり中距離砲に定着した感じ。イチローのもつスピードとキレがないだけに並の選手に映るが、ヤンキースを率いるトーリ監督は松井選手に絶大の信頼をおいている。片や、松井も監督の信頼の視線が“心の支え”とまでいう。また、監督は先日、8才になる末娘(孫娘?)の聖餐式とやらで試合を欠場していたが、親の死に目にも試合に出る日本人の感覚とは全然ちがうようだ。
 そのトーリ監督は、過日、日経新聞に手記を寄せていた。日本での開幕戦のオーダーに、監督は松井を4番に据えたが、頭を悩ましたのは松井の打順ではなく、メジャー経歴が完璧、走攻守3拍子揃ったベテランを9番にすることだったそうだ。そんな時、監督が最も大切にするのは、コミュニケーションだという。コミュニケーションこそが、信頼のカギであり、信頼はチームワークのカギ。スポーツ、ビジネス、家庭…およそどんなグループでもこのことは変わらないと語っている。
 また、監督は人生について「楽天的であること」、「信念と意欲を持つこと」、「心遣いをすること」をベースボールから学んだと結んでいる。昨シーズン松井が一時スランプで「ゴロ王」と揶揄されても使い続けたのは、松井が監督の人生訓を体現している男と見抜いているからだろう。凄い慧眼だ。トーリ監督は、近い将来、ヒデキ・マツイをヤンキースの主将に据えるかもしれない。(だだっ児)
(2004.5.19)

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