農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

スズメ脅し

 8月に入ると、近所の田んぼは穂が出揃った。朝から「ドカーン・ドカーン」と、スズメ脅しの爆発音が鳴り響く。穂が出て色づく前の柔らかい稲の汁をスズメが吸いにくるからである。おかげで(?)、我が家の愛犬が大音響に怯えたり、事情を知らない近所の老夫婦が心臓に悪いと市役所に駆け込む騒動も。
 今年は、昨年の冷夏が一転、連日猛暑がつづく。千葉では、盆前に検査が始まり、いよいよ、今年産米の集荷・販売がスタート。今年はこの4月に改正食糧法が施行され、全農の自主流通法人の看板も、自主流通制度もなくなる。米流通史上、大変革の年。
 このため、JAグループは安全・安心をコンセプトにした「JA米」の確立を進めている。生産者との出荷契約は、目標100万トンのところ、200万トンも積み上がったとか。JA米は(1)銘柄が確認できた種子により生産された米穀、(2)登録検査機関で受検された米穀、(3)生産基準に基づき栽培され、栽培履歴が記帳により確認できる米穀、とハードルは高い。それにも関わらず、目標の倍も積み上がるのは、産地の「売れる米づくり」の熱意の、いや、そうしなければ「負け組」になるという危機感の現れでもあろう。
 もちろん、安全・安心を謳うだけに、産地は残留農薬やカドミウムなどの検査も行い、よりいっそう安全性の追求に万全を期している。しかし、気になるのはDNA鑑定による品種の特定、そして「1粒たりとも異品種が混じってはならない」とするコンタミ問題だ。下手をすると、折角JA米と銘打った米もコンタミで足下をすくわれかねない危険がある。
 米を販売するとき、単一品種、例えば、コシヒカリ100%と表示した場合、1粒でも異品種が混入していると、JAS法違反とされる。このため、米卸の精米工場は、異品種が混じらないように、莫大な費用をかけて整備改善をすすめているが、この問題は川上にも波及しかねない形勢。
 JAS法の精神は、偽装表示をなくし、消費者の「食の安全・安心」の信頼を確保することにあるはず。偽装表示や詐欺行為は決して許してはならないが、健康上なんら問題ない、わずかなコンタミにまで眦を決するのはいかがなものか。「1粒たりとも」は、誰がみても行き過ぎ。昔から「過ぎたるは及ばざるが如し」という。農家も、住民(消費者)も命がけでスズメと戦っているんですよ。(だだっ児) (2004.8.18)

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