農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

酉年の“不安”

 「災」から「福」を念じつつ、新年を迎えた。年末、NHKテレビの「クローズアップ現代」で、「超大国の“不安”」というタイトルでアメリカの現状が映し出されていた。今のアメリカは「単独行動主義」「保守化」「二つのアメリカ」の3つのキーワードで括られるそうだ。かつての「懐の広い、寛容の国」はどこかに消え、国民は「アメリカはどこへ行くのか」と不安を募らせている。
 一方、アメリカ一辺倒の日本は今、この国の姿を大きく変えようとしている。アメリカ国民同様、日本国民にも一体この先「日本はどこへ行くのか」という不安がヒタヒタと押し寄せる。不安の一つは、憲法を改正して、「戦争する国」になるのではという不安。もう一つは、「農がなくなる国」になるのではという不安。
 前者は多分国民世論が真二つになろう。しかし、後者は心もとない。なぜなら、第一に、この国の国民は食べるのに困っていない、第二に今や農家は少数派、小泉流にいえば抵抗勢力、多勢に無勢だ。考えれば、この二つの不安の根っこは同じ。憲法はこの国の精神である9条を改正して、「戦争する国」へ。また、農業はこの国のZ旗=食料自給率向上目標を早々と降ろし、小規模農家を切り捨て、大規模農家に金を集中、効率的な農業を目指そうとする。どちらも、今までのこの国の骨格、スタンスを180度変えようとしている点では同じ。
 昨年は「米は命」をキャッチフレーズにした「国際コメ年」。日本は具体的に何をしたのだろう。料理研究家の小林カツ代さんは「この国の農業政策は米を大切にしない。米は余るほどいっぱいつくり、政府が買い上げ、戦争や飢饉で苦しむ人々や難民に送ってほしい。お金は武器の予算を削ればいい」とズバリ(朝日「未来を生きる君へ」)。それもそれ、今年の国家予算をみると、防衛関係は4兆8500億円、それに対して農水関係は3兆円を切る、可笑しな話。
 日本は「瑞穂の国」、この国是を捨てると、ニッポンニアもニッポン(作家、早坂暁の言葉)もなくなる。今、盛んに攻めの農政とかで、米や農産物の海外輸出が喧伝されているが、それより飢餓人口8億5千万人、毎年餓死する500万人の子供の救済に米・金・知恵を使うほうが、日本農業の再生、そして国際貢献につながると信じる。(だだっ児)

(2005.1.5)

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。