農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

「ホリエモンVS農耕民族

 「学校の社会の授業で、日本が稲作文化をもち、そのため人々は協力し、良い関係を保つ事を気にかけてきた…そのため日本人独特と思われる細やかな気づかいや控えめな態度が生まれたのだと知った」。これは朝日新聞社主催の高校生の「天声新語」コンクールで優秀賞を受賞した長嶺晴佳さんのコラム。
 長嶺さんは、中学時代を英国で過ごし、学校では、自分の意志をもちそれを貫く強さが大切だと教えられる。自分の意志よりも周りの意見を尊重する日本人の考え方とのギャップに悩むが、日本人のそれは農耕民族をもとにし、英国は個人で判断し行動する狩猟民族、文化の違いにあることに気がついたという。
 さて、IT企業ライブドアの堀江貴文社長がフジサンケイグループに挑んだニッポン放送買収劇は、150年前の開国以来、今度は和製黒船が新しい日本社会の扉を開けるのではと、若者やおじさんたちが拍手を送っているそうだ。
 一方、当然のことながら、ニッポン放送は経営者も社員までもがホリエモンに露骨な嫌悪感をしめす。また今回の買収劇をめぐって、経営者は株主の利益を考えず、会社の維持に明け暮れており、「会社は誰のためにあるか」が問われているのだともいう。長年企業に籍を置いてきた身にとって、これらは考えさせられる問題。だが、欧米ではいざ知らず、日本の企業経営者、社員は株主に雇われている意識はなく、会社のため、自分のために働くというのが通常の意識。企業という組織は「社員の共同体」が日本型企業社会の常識だろう。
 翻って、わがJAグループはどうだろう。お叱りを覚悟で言わせて貰えば、株式会社と大同小異。株主ならぬ組合員がバックにいるという意識は、会社組織より強いが、経営者や従業員はJA、あるいは全農という企業価値を高めるために懸命に働き、ロイヤリティを尽くす姿は会社と何ら変わらない。
 会社と協同組合はよって立つ基盤は違うが、その根っこには農耕民族のDNAが底流にある。その点、今回の企業買収劇は狩猟民族vs農耕民族、いやホリエモンVS農耕民族の闘いに映る。「金で買えないもの物(あるいは者?)はない」という彼には冒頭の長嶺さんの爪の垢でも煎じてあげたい。昔から日本人は「お金は額に汗して稼げ」といわれてきた。その勤勉な日本人、農耕民族のDNAまではお金で買えまい。ただ、IT社会には農耕民族のDNAを根底から壊す魔物が住んでいるやも知れない。恐ろしや恐ろしや…。 (だだっ児)

(2005.4.8)

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