農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
 

「私を野球に連れてって」

 イラク戦争は、あの9・11事件が引き金といわれる。大量破壊兵器とテロが結びついて生まれる21世紀の脅威・恐怖感がアメリカを突き動かしたのだと。9・11、同時多発テロで破壊された世界貿易センタービルの跡地は、グランドゼロと呼ばれている。ゼロ地点、爆心地の意味。この意味では、かつてのヒロシマ・ナガサキ、今度のバグダッドもグランドゼロだ。攻撃した者は、暴力を行使した相手の復讐に怯え続け、暴力が連鎖するといわれるが、今のアメリカの姿そのもの。
 そのアメリカ、大リーグ・ヤンキースの選手となった松井秀喜がニューヨークで最初に降り立ったのがグランドゼロ。松井選手らしい律儀さ、真面目さを表す行動だ。そんな松井を「神が祝福する」。4月8日、ヤンキースタジアムの第1戦で、グランドスラム(満塁本塁打)を打った。メジャー第1戦が初打席初球先制打、その後も勝ち越しホームラン、サヨナラヒットと大活躍。
 お陰で、土、日曜日はテレビの大リーグ中継に首ったけ。それにしても、大リーグは凄い。スピード、パワー、とにかく迫力満点。それと、ドミニカ共和国、ベネズエラ、メキシコ、キューバ、プエルトリコと、いろんな国の選手がチームを構成しているのも面白い。ヤンキース随一の人気選手、ジーター遊撃手は、アメリカ人だが黒人と白人の混血。その甘いマスクは、キムタクが巨人でクリーンアップを打つようなものというから、愉快だ。
 7回のホームチームの攻撃が始まるとき、大リーグは「私を野球に連れてって」という歌が流れる。イラク戦争が始まったときは、これが「神はアメリカを祝福する」だった。神は、真面目で謙虚な松井こそ祝福したが、傲慢なアメリカを祝福なんかしないだろう。
 『ビッグフィールド』という映画にこんな場面があるそうだ。母子家庭で育つ大の野球好きの少年が、祖父に野球観戦に誘われるシーン。母親が、学校があるからダメと言うと、祖父が「何を言ってるんだ。今日はクレメンス(ヤンキースの大エース)が投げるんだぞ!」と、粋なセリフで切り返すとか。
 今に、このセリフが「今日は、松井がホームランを打つんだ。私(僕)を野球に連れてって!」に変わる日が来るにちがいない。アメリカは世界中の国々を受け入れる心の広い国のはず。驕りと傲慢を捨て、かつての「敬意とあこがれ」の国に戻れ!  (だだっ児) (2003.5.8)

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