系統利用すすまず!?
もし「人生で何が一番よかったか」と聞かれたら、ためらわず「妻にめぐり会えたこと」と答える。これは過日、毎日新聞の“男の気持ち”欄に76歳の男性が寄せたコラムの一節。
先日、1昔前、机を並べた後輩が偉くなって本所に復帰。久しぶりに酒を飲み交わし、旧交を温める。支所で全農本所と県連・県本部の狭間に立ち、揉まれてきたせいか、全農マン特有の如才なさに神経の研ぎ澄まされた精悍さが顔に漂う成長振り。折から全農は人事の季節。人事の話を肴に、趣味や家庭の事情まで及ぶのが全農マンの酒談義の常。
全農は5支所をこの3月末で廃止する。全購販合併からはや50年、固定した組織の機構や制度を金科玉条のごとく守っていると、「制度疲労」や「大企業病」に陥ってしまうのが、組織の宿命。折からのJA経済事業改革の嵐が吹く中では、仕方のない流れだろう。しかし、組織の改廃には、人員の整理・リストラがともなう。今回はかなりの悲喜こもごも劇があったようだ。
全農の支所は、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡と日本列島を縦断。そこで、採用された女子職員は大抵が異動をともなわない担当職(ブロック職)。したがって、それを選んだ職員は、残ったセンターや事業所に勤務できなければ、辞めるしか道がない。事実、今度、退職する女性は60数名に上ったという。
話を冒頭に戻そう。近ごろ、「いつかは結婚したい」けれどもしない、できない“結婚難時代”らしい。随分昔、流行った“大学はでたけれど”ではないが、学卒がフリーターやパラサイトシングルでは、土台、結婚どころではないだろう。結婚への踏ん切りが“できちゃった婚”では、なんとも寂しい話。
欺く言う自分も、先の同僚も職場結婚、いわゆる系統利用(業界用語)。それもこれも、全農という大企業にお世話になり、支所勤務ができたお陰。そこには、青年婦人部があり、労働組合があり否が応でも若い男女が交流する。そして、結婚と相成る訳。支所がなくなると、こんな図もなくなることだろう。IT時代とかで、何もかも効率化、合理化で人を大切にしないと、組織に血が通わず、それこそ動脈硬化を起こすのではと心配になる。
老兵がくだくだぼやいても仕方がない。問題は、冒頭の御仁が言うが如く、「わが人生の最良は妻にめぐり会えたこと」と述懐できるか、どうかだ?(だだっ児) (2004.1.28)