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コラム |
農家の笑顔
小泉首相の再訪朝で、拉致被害者5人の家族8人のうち、曽我ひとみさんの家族を除く、5人の子どもたちが帰国した。日朝首脳会談終了後の拉致被害者5人の記者会見がテレビ報道されていたが、地村・蓮池さん夫妻は曽我さんの家族が帰国できなかったことに心を痛め、曽我さんは曽我さんで、自分の悲しみをこらえ、他の家族の帰国を喜ぶ姿が妙に心に残った。 それは、私たち日本人が久しく忘れていた「他人の気持ちを思いやる」という美しい日本人の心を彼らに見せられたからだと思う。25年も他国で暮らしていた彼らが、いや、そんな彼らだからこそ日本人のもともとの心を失っていなかったのかも知れない。また、「家族会」代表の横田さんの口調は厳しくとも、いつも絶やさない笑顔も実にいい。小泉首相の能面のような、クールな顔とは対照的。 この日本人の優しい心、いい笑顔の典型を農家にみる。毎朝、犬の散歩に近くの農道を歩く。時々、田んぼの見回りにきた農家の方の軽トラと鉢合わせになり、あわてて畦道に避難するが、農家のおじさん(ときには、おばさん)は、本当に済まないという顔で頭を下げる。何の刺々しさのない、優しい笑顔だ。以前、日本農業新聞で農家の写真を撮り続ける千葉の女性カメラマンを紹介していたが、彼女がいう「農に汗を流すお年寄りのすてきな笑顔」は、近い将来、もう見られなくなるような気がする。 ここまで書いたとき、一人いい笑顔の持ち主を思い出した。今回、農協人文化賞を貰う湯澤武雄さん。JA上伊那の前組合長で、長野県は宮田村の出身。カントリーエレベーター(CE)のオペレーター経験もあるとかで、みごとに、CEを中心とした稲作体系をつくり、CE米の販売にまで心血を注いだほんまもんの農協人。先年の米政策改革研究会の公聴会でも「これ以上の生産調整は限界」と毅然と発言していたのが印象に残る。 そんな湯澤さんが組合長時代、2、3度、仕事の関係でその人柄に触れたが、厳しさの底に、実に心の優しい、素晴らしい笑顔の持ち主。今は現役を退いて、それこそ「農家の笑顔」を地でいっていることでしょう。湯澤さん、受賞者の皆さん、おめでとうございます。いつまでも、いい笑顔でいてください。(だだっ児) (2004.6.4)
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