トヨタの強さ
売上高18兆円、純利益2年連続1兆円を突破。このトヨタの強さは「カイゼン」「カンバン方式」などのトヨタ語に代表される単なる効率経営の追求だけではないようだ。たとえば、トヨタが中国で売る車はハイブリッド車「プリウス」だという。なぜ、カローラではなく割高なプリウスなのか?
環境学者レスター・ブラウンが著書で「中国人が一家に1,2台の車を保有すると、石油消費量が中国だけで1日の(世界の)石油生産量を上回る」と分析しているそうだ。そうなると、中国は世界最大の自動車市場でありながら最大の環境破壊国にもなる。そうさせてしまう可能性があるのは自動車大手、「トヨタにも大きな責任がある」。だから、低公害車プリウスを売るのだという。そこには「社会的責任を忘れた企業は存在意義を失う」、「社会から尊敬されなければ事業はできない」という高レベルの経営理念が働いている。
JA全農は去る7月14日、「新生全農を創る改革実行策」を発表した。実行策は不祥事の再発防止、即ちコンプライアンス(法令順守)の浸透と組合員・消費者の満足度の向上を柱とし、耕種、畜産、生活、管理の事業本部制の確立や経営役員会の定数削減、外部役員の増員など、新生全農の骨格がみえる。後は、具体的な肉付けと確実な実行だろう。
ただ、翌日の全国紙を広げてみると殆んど取り上げられていない。マスコミは社会的に関係のない全農内部のできごと、あるいは農業問題は今どきニュースバリューに欠けると見ているのか..何もわざわざマスコミを通じて新生全農をPRすることはないが、改革実行策が日本農業新聞のいう'国民への「公約」'にしては寂しい扱い。こうも影が薄いのは、トヨタのような企業、事業体としての社会的存在価値をアピールするものがみえないせいかもしれない。
今、サッカーの中田選手らが国際NGOの「ホワイトバンド運動」の活動に加わっている。「3秒に一人、貧困で子どもが命を落とす」、この現実はトヨタが中国に車を売る話どころではないはず。トヨタが車を売るために「環境」に立ち向かうなら、全農、JAグループは日本農業再生のために「世界の貧困」「飢餓」の前面に立ってはどうか。これこそが協同組合の社会的存在価値。トヨタのめざす「社会から尊敬される」「バリュアブル」な存在にならないと、全農いや、JAグループの明日はない。(だだっ児)
(2005.7.28)