「祖国とは農」
毎週日曜日朝、たいていTBS系テレビの「関口宏のサンデーモーニング」を見る。いつも、毎日新聞特別編集委員の岸井成格氏とか、国際政治学者の浅井某とか、大宅映子ら各界の識者が時世を論ずる。だいぶ前になるが、日本総合研究所の寺島実郎氏が、今、問題になっている耐震強度偽装問題やライブドアショック、アメリカ産牛肉の再禁輸の諸問題を指して、日本の「パラダイム」が崩れていると指摘していた。
パラダイム、用語辞典によると「理論的枠組み、規範、典型」とある。これに「日本の」が頭につき、それが崩れる?何のことはない以前、この号で紹介した藤原正彦さんのいう「国家の品格」が崩れている、いや、壊れていることにほかならない。ここ5年あまり小泉首相の強烈な個性と、市場原理主義とやらで改革をすすめてきたが、一連の問題に象徴されるように、この国も、その構成員の日本人までも、すっかり壊れてしまったように思える。
藤原氏は「国家の品格」で、今のこの国は、日本人を特徴づける「情緒」と「形」、すなわち、「懐かしさとかもののあわれ」や「武士道精神からくる行動基準」を失ったという。そして、こんな一節も。たとえば、食糧自給率問題でいえば、脳の100%が利害得失で占められている人は、この狭い日本で農業を振興するのはバカげている。アメリカや中国から安い食糧をどんどん輸入すればよいとなる。しかし、「もののあわれ」という「情緒」を強く持つ人は、農家を潰しては田畑が荒れてしまう。美しい田園こそは、わが国の誇る文化や伝統の源泉。経済的利益などとは比べられないものだ。何としてでも農家を守らねばと考え、自給率の向上を唱えるという。残念ながら、今の日本人の多くは、前者が圧倒的。何しろ、誰かのセリフじゃないが「金で買えないものはない」世の中なのだから...。
著者は、前著で「祖国とは国語」といい、「もののあわれ」を培う国語教育の重要性を説いているが、これは著者の比喩。私にいわせれば、この国はどこまでも「祖国とは農」。そして、市場原理主義とやらに対抗するのは、「万人は一人のために、一人は万人のため」の「協同組合」精神。今、定年帰農とやらで、団塊世代の定年退職後の生き方に農業が選択肢に入っているようだが、ここは一つ、祖国の農業再生のために頑張らなくては!それこそ祖国日本が潰れる。(だだっ児)