農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム

原田選手の油断?

 やっとメダル、しかも金メダルを女子フィギュアで荒川選手が獲得。それにしても、トリノ冬季五輪で日本勢は苦戦した。スピードスケートの男子500メートルの加藤条治も、スノーボードの童夢もメロも、フリースタイルスキーのモーグル女子の上村愛子もメダルに届かなかった。とくに、日本のお家芸スキージャンプの不振は目を覆った。
 その象徴がスキージャンプの原田選手。ノーマルヒル予選でよもやの失格。必要な61kgの体重に0・2kg、たった200グラム、コップの水1杯分足りなかった。原田の油断?いや、五輪前からジャンプ陣の苦戦が予想されていた。その理由に、ジャーナリストの生島淳氏は、スキー板やウエアの制限や変更などのルール改正が日本側に不利益に働いたことと、北海道経済の沈滞をあげる。
 北海道経済の沈滞?北海道拓殖銀行(拓銀)が経営破綻し、営業停止したのが、長野五輪が開催された98年、そして00年と02年に起きた雪印の不祥事。この北海道を代表する企業は、所属のジャンプ選手を手放したり、新たな選手採用を控えたりしたため、競技力のピークを過ぎた30代の長野経験者に頼らざるを得なかった。つまりは、北海道経済の混乱が世代交代が上手くいかず、競技力の低下につながったと敗因を分析する。
 このように、アスリートの育成を専ら企業に頼るやり方では、メダルはとれない。原田も、葛西も5大会連続出場。スピードスケート女子の岡崎も4大会連続、まだ先を目指すとか。彼らの頑張りは凄いが、つづく若い選手が出てこないのは、日本の企業スポーツの限界、何より国が手を抜いている証拠。
 この現象は、経済界、いやスポーツ界だけにとどまらない。農業界も同じ。今、盛んに「定年帰農」が叫ばれている。内閣府の世論調査でも団塊世代の半数が「週末は田舎で」を望んでいるという(自分もそうだが)。これは、裏返して言えば、農村に、農業界に若い世代が育っていない証拠。年金暮らしをベースに、趣味(?)で農業。堺屋太一氏に言わせれば、団塊世代の「黄金の10年」が始まるというが、今の日本農業を支えている高齢の農家、プロの農家から「ふざけるんじゃない」と怒られそう。よしんば、その10年後はどうなるの?だから、品目横断的経営安定対策やら、担い手対策をやってるんだろう。そうでした……(だだっ児)

(2006.3.8)

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。