'美しい田園'...
今、新書で1番売れているのは、「国家の品格」、2位は「超バカの壁」。これらは、この日本という国や、社会の問題をとりあげた本。養老孟司さんの前作「バカの壁」は470万部も売れたという。なぜ、こんなに売れるのだろう?
だいぶ前になるが、毎日新聞の「発信箱」で冠木雅夫さん(学芸部)が、司馬遼太郎没後10年になるが、大事件のたびに「司馬さんならどう言っただろう」、「司馬さんの空白を埋めたい」、という人々の期待が、「国家の品格」の藤原正彦さんや、養老孟司さんのブレークにつながったのでは、と述べていた。
藤原正彦さんは、この本を出版したとき、今どき武士道精神を持ち出して、民主主義も、自由も、平等も、片っ端から批判して、それこそ日本中、いや、世界中から、総スカンを食らうかもしれない、と覚悟したそうだ。それが、2カ月半で70万部のベストセラー。氏は、これに力を得てか、以来、「市場原理主義」批判の急先鋒となった。
とにかく、氏の'哲学'は教養に溢れ、小気味がよい。品格のある国家の特徴として、(1)国家の独立不羈、(2)高い道徳、(3)美しい田園、(4)天才の輩出をあげるが、これらがみな由々しき事態になっているという(月刊現代4月号)。たとえば、国家の独立不羈とは、「自らの意志に従って、行動のできる独立国」をいうが、現代日本はほぼアメリカの植民地状態。最近の「米国産牛肉輸入再開問題」も、アメリカの属国に成り果てている表われ、とズバリ。
以前から、日本はアメリカの51番目の州といわれているが、それもそのはず、10年以上も前から、アメリカの「日本属国化計画」いや、「年次改革要望書」なるものがあって、先の郵政改革にしろ、司法改革、教育改革まで、アメリカの市場開放要求にそってすすめられている、という。何とも恐ろしい話だ。
つづけて言うと、「年次改革要望書」を書いた関岡英之さんの「拒否できない日本」(文春新書)が、最近、どこの本屋に行っても書棚から消えている。政治評論家の森田実さんに言わせれば、この「年次改革要望書」なるものは、小泉政権(マスコミも)はタブー化しているという。ひょっとすると、どこからか横槍が入って棚から消えたのかもしれない。
どうもこの国は「なにかがおかしい」。WTO農業交渉で、MA米が600万トンも入ってきたら、それこそ「美しい田園」が消える...(だだっ児)