“希望格差社会”
18豪雪とやら、厳しかった冬も終わり、強い春風が吹き荒れる今日この頃。ふつう、この4月から社会は順繰り回転する。学びを終えたものは、社会の扉をくぐる。学校を出たら就職する、この当たり前のことが間々ならない世の中になっている。働かず、学ばず、職を求めない、いわゆるニートの増大や、若年フリーターなどの非正規雇用者が増大し、順繰り社会の歯車が狂いだした。
厚生労働省のまとめによると、ニートが4年連続で64万人台、そのうち、25〜34歳の“大人ニート”が6割を超えている。また、05年の若年フリーターは201万人で、これまた25〜34歳の“大人フリーター”が半数を占めている、という(なぜか、これは総務省調べ)。結婚適齢期の年代がこんな暮らしでは、とても結婚なんかできない、もちろん子供もつくれない。したがって、少子化もとまらない、となる。何ともおかしな世の中になったものだ。
あの「パラサイトシングル」なる言葉を生んだ社会学者・山田昌弘さんが今度は「希望格差社会」なる新書を出している。この言葉は、「勝ち組」と「負け組み」に両極化する日本社会において、「負け組み」にもう一度頑張ろうという希望を抱かせるシステムが崩壊している社会をいうらしい。学校卒業後、いったんフリーターになると、正社員への門戸が狭く、「フリーター・非正規社員」が固定化される未来に希望のもてない格差社会だ。
もっと言えば、貧乏な親をもつと、子供は進学を断念せざるを得ず、それが壁で就職の機会も失う「機会不平等社会」、「下流」があらかじめ固定化した社会をいうとも。なにしろ、公立の小中学校で文房具代や給食費、修学旅行費などの就学援助を受ける生徒数が増加し、東京都の足立区にいたっては就学援助率は42・5%にも達している、というからひどい(「文藝春秋」4月号、佐野眞一氏のルポ)。また、生活保護世帯、国民健保不払い、年金未納者が急増し、下流社会どころか下層社会が現出しているとも伝えられる。
市場原理主義や、グローバル化の流れは、誰が政権を担当してもとめられなかったという識者もいるが、小泉改革がこんな格差社会を生んだのならその罪は大きい。春を迎えれば、農家は安心して種子をまき、生徒は希望に胸を膨らませて学校に、学校を卒業すれば社会でガンバル。「希望のもてる社会」でなければ、日本国家そのものが潰れる。(だだっ児)