「逆さメガネ」
最近、都内では鳩が大量死、北海道では雀の死骸が多いとかの報道を目にする。そういえば、数年前、我が家につくられた福を呼ぶといわれるツバメの巣が雀に襲われる事件があったが、今年はあまり鳴き声を聞かない。寒さのせいとも言われているが、原因がよくわからず、そのうち「沈黙の春」になるのではと、少々不気味。
以前、ある本で地球温暖化のショックで東京湾海底のコレラ菌が目を覚まし「コレラが街にやってくる」とあった。おまけに無菌国家で純粋培養され、抵抗力を失った日本人は、これらの病原体が蔓延すると一たまりもないと警告している。たしかに、昨年来、鳥インフルエンザなど「安全」を脅かす問題が、日本のみならず中国や欧州など世界中で発生しており、揺るがせにできない。
しかし、どうも日本人の清潔志向は過剰を通り越して異常にも思える。一例として、今年の5月末からポジティブリストとやらの法律が施行される。これは、たとえば、米に認められている農薬がAとBがあるとして、これに認められていない農薬Cが検出され、それが残留基準0.01ppmを超えていると、その米は販売できなくなる法律。この残留基準値は、一億分の一とかで、小学校の25mプールに塩ひとつまみ(3グラム)を垂らした程度の量というから驚く。こんな基準値を設けてどんな意味があるのだろう?
先日、ある米の卸さんの話を聞いたが、この法律が施行されると、買い手市場のなか、バイヤーから残留農薬に問題がないとの証明を求められるのではと、危機感をつのらせていたが、十分その可能性がある話だ。また、新鮮・安全が売りのJAの直売所などもよほど気をつけないと、残留農薬問題で大きな問題になりかねない心配もある。先の米のコンタミ問題といい、このポジティブリスト制度は「何のため」、「誰のため」の制度なのかよく分からない。
それにしても、日本人はことの本質の裏表をよく考えずに、ただ「安全」といえば、一途にエスカレートするきらいがある。これは、養老孟司さんじゃないが、われわれは「色メガネ」ならず「逆さメガネ」をかけていて、それに慣れてしまい「世の中がおかしくなっている」のに気がつかない、「何も人の健康に影響がない」のに気がつかない、愚かな人種になってしまったのかもしれない。(だだっ児)