満濃池と瀬戸大橋
「讃岐日照りに米買うな」、讃岐・香川県は年間降雨量が全国平均の3分の2ほどとかで、夏はよく取水制限が報じられる。ここは大きな河川もなく、農業用水は1万6000もある溜池によるところが大きい。なかでも、満濃池は日本最古の溜池で、弘法大師・空海が821年に完成させたと伝えられている。
その“讃岐の水がめ”満濃池のユル抜きが毎年6月13日(昔は夏至の3日前だったとか)に行われる。このユル(取水栓)を開けて、池の水を放出し、水田に水を送る仕掛け。いよいよ田植えが始まるわけだ。今年運よく、このユル抜きをみることができた。取水口から大量の水が流れ出す光景は何とも壮大。しかも、この溜池は1200年たった今でも現役と聞き、ただただ驚く。
講釈ついでにいうと、古事記では讃岐を飯依比古と呼び、「米の神さまの国」という意味とか。また、ここの山(飯ノ山と呼ばれる)はおむすびの形をしており、昔は山頂に飯神社があったそうだ。随所に「米の神さまの国」らしい名残りがある。ついでに、冒頭の「讃岐日照りに米買うな」は、讃岐が日照りの年は、他県では丁度いい水具合で豊作だから米商人が米を買い占めても商売にならないことをいったとか(以上、阿津秋良著、雑学読本香川県による)。今年は今のところ雨が多く、水には困らないそうですよ。ということは??
帰り、瀬戸大橋を車で渡った。満濃池が壮大な自然美なら、瀬戸大橋は近代土木技術を駆使した人工美の極致。全長10キロ余りの世界最大級の橋梁を吊り橋や斜張橋など6つの長大橋がつなぐ景観は壮観。空海和尚は土木技術に優れていたといわれるが、この景観は露だに想像しなかったであろう。でも総工費は1兆何千億円。以前、四国のある組合長が1晩毎日、百万円飲んでも、3千年掛かる(計算間違い?)と、冗談まじりに言っていたことを思いだす。
このように莫大な工費がかかったせいか、通行料が高く走っている車は少ない。以前よく利用した宇高連絡船はこの橋の開業とともに廃止されたが、それと並行して運行していた民間航路はトラックドライバーの利用が多く今も存続しているそうだ。マータイさんじゃないが、なんとも「モッタイナイ」気がする。わが国最初の国立公園、瀬戸内海にはこんな橋は似合わない。満濃池は米づくり、百姓のため、瀬戸大橋は?のため、と感じた次第です。香川、いや四国の人に怒られそう……(だだっ児)