農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂

“コウノトリの贈り物”

 梅雨明けは8月? この列島は梅雨前線が大暴れ、記録的な豪雨が各地に被害をもたらしている。先日、この梅雨空の合間をぬって「コウノトリ空港」じゃなく、JR福知山線(福知山からは山陰本線?)豊岡駅を降りた。飛行機だと、羽田から大阪・伊丹空港経由が最短らしいが、兵庫県北部・但馬地区ははじめてのこともあり、新幹線で京都まで行き、この路線を使った。
 この兵庫県但馬地区は、ご存知の「コウノトリの野生復帰」に取り組んでいる。コウノトリは赤ちゃんを運んでくるという伝説があるそうだが、この地を訪れた紀子妃殿下がこの9月にも第3子をご出産されるというから、まさに“コウノトリ”の贈り物'。なんでも、新潟・佐渡のトキは国、コウノトリは県や豊岡市の取り組みというから、少々ややこしい。ましてや、男子ご出産ともなれば、この扱いはどうなるのだろうといらん心配をしてしまう。
 さて、ここで言いたいのは、コウノトリの野生復帰の取り組みでこの地区の稲作が変わろうとしていること。コウノトリはアイガモ(雑草と害虫がエサ)とちがって完全な肉食で、田んぼのドジョウやカエルなどが好物。そこで、JAが音頭をとって、「コウノトリ育む農法」を提案。冬期湛水や中干しをずらすなど、コウノトリのエサ場となる無農薬や減農薬の田んぼを広げている。
 この運動のコンセプトは「コウノトリが住めないような環境は人間にとっても悪く、コウノトリでも住める環境は人間にとっても良い環境」。たしかに、ただコウノトリという一つの種を保存する運動では長続きはしまい。
 JAもこの農法でつくった米を「コウノトリの郷米」として、JAの直営店・地米屋や地元のスーパーなどで販売している。できれば、京都から隣の城崎まで、但馬牛とこの米で「牛肉弁当・コウノトリ」でもつくり、車内販売をしたらどうですかと、これまた余計な提案(何しろ、往路車内販売がなく、腹が減った)。ついでに、この路線もコウノトリ線か夢千代線に変えたら…。
 “コウノトリの贈り物”、この意味が但馬に暮らす人々だけでなく、われわれ国民が理解したとき、農業、そして世の中が変わると思いつつ、この里を後にしたのです。余談ですが、かっての城下町出石でご馳走になった「出石そば」は、絶品!(だだっ児)

(2006.7.28)

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