農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂

「ただいま、帰ってまいりました」

  「巨人 大鵬 玉子焼き」、野球でいえば「巨人ファンばかり」の北の大地で北海道日本ハムファイターズがプロ野球日本シリーズで中日ドラゴンズを降し、日本一になった。パリーグのMVPは誰かしらぬが、日ハムを「種を蒔き、水をやり、大輪の花を咲かせた」、陰、いや、真のMVPは新庄剛志選手だろう。
 新庄剛志、「宇宙人」「新人類」と、いろいろ言われるが、初めての給料で買ったという7500円のグラブを17年間使い続け、「もうグラブが悲鳴を上げているので、自分も引退する」は泣かせる。日米で野球人生を完全燃焼した男。参院選に出馬とか噂されているが、カリフォルニア州のシュワルツネッガー知事じゃないが、そのパフォーマンスを活かして東京都知事、いや、北海道知事に打ってでて、この暗い日本を明るくしてもらいたいものだ。
 次にヤンキースの松井選手。新庄選手とは好対照のマジメ男。先日も、今問題になっている「いじめ自殺問題」で松井選手は「あなたの周りにはあなたを心底愛している人がいる。もう一度じっくり考えてほしい」と、子供たちに訴える。自身、今オフ、左手首の骨折のリハリビ中に激励されたニューヨーク日本人学校の生徒への「お礼行脚」を行っているという。なんと律儀な好青年だろう。
 その松井選手、大怪我から復帰した9月第1戦で「只今、帰ってまいりました」という手記をサンスポに寄せていた。そのセリフに、かつて日本プロ野球界で名将といわれた一人の監督を思いだす。巨人軍の第二期黄金時代を築き、日本ハムの前身・東映を44年前日本一にした故・水原茂さんだ。「水原茂、ただいま帰ってまいりました」。これは水原茂が応召して、シベリア抑留を経験。1949年帰還後、後楽園球場でファンに報告した名セリフ。映像でみただけだが、白い麻の服、坊主頭を震わし絶句する姿がなぜか記憶から離れない。
 松井選手と水原茂さんの体験は違えど、ある意味では「死地からの生還」。両人とも、再び野球がやれる(水原氏は復帰後、監督としてだが)という、喜びがこの言葉からひしひしと伝わる。今、北朝鮮の核問題を前にしてか、核保有云々とか、防衛庁を「省」にするとか、物騒な論議が行われているが、「ただいま!」は子供が学校から帰ってきたときの元気な声だけでいい。これに「帰ってまいりました」はいらない。
(だだっ児)

(2006.11.24)

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