農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂

ワーキングプアー

 景気拡大が4年10カ月に達し、「いざなぎ景気」を超す最長の景気だと、政府は言う。「ほんまかいな」といいたくなるほど、実感がない。「岩戸」や「いざなぎ」景気の頃は、年平均の経済成長率が10%以上あったそうだが、今回の成長率は2%強。賃金を抑制したり、リストラで人件費を削った大企業の懐だけが潤ったのでは、国民の実感がわかないのは当り前。
 公的資金、いや人様の税金を使って、不良債権で苦しんだメガ銀行が1兆円もの利益を上げ、二酸化炭素を撒き散らす自動車メーカーが、日本人の主食である米の生産額に匹敵する利益を上げる。一体、彼等はこの国にどんな社会貢献をしているのだろう。銀行なら儲かった利益で特養老人ホームをつくったり、自動車メーカーなら、それこそバイオエタノールの生産設備をつくるなど、国民に利益還元をしないと今にバチが当るよと、言いたくもなる。
 この何景気(例のタウンミーティングとダブらせて「サクラ景気」という人もいるが)かしらないが、実感がない最大の理由は、「格差社会」で出現した、ワーキングプア(働く貧困層)と呼ばれる人々の増加であろう。とくに、若年層の労働条件の格差拡大や不安定雇用を放置すると、単に年金や医療など社会保障制度だけでなく、この国そのものが壊れてしまねかねい危険をはらんでいる。やっと、年金暮らしに辿りついたオジサンとて、いくつになっても嫁にいかない、結婚しない子供(?)の行く末を案じ、はたまた人生設計を誤り家のローンをいまだに抱え、かみさんはパート(正確にはヘルパーとか)へ、オジサンはアルバイトの毎日。この分では、「働けど働けど我が暮らし楽にならず」を地でいく、ワーキングプア生活が死ぬまで続くのかもしれない。
 そのうえ、またぞろ変な労働政策が導入されそうだ。一つは、自律的労働時間制度、具体的には年収400万円以上は労働時間の規制を除外する制度。またの名を「残業代廃止制度」、「過労死・過労自殺促進制度」と呼ばれる。もう一つは、パート労働法改正案。このパート法改正は、安倍首相の掲げる「再チャレンジ」支援策の主要テーマの一つとかで、一見、弱者に優しい政策に見えるが、狙いはパート労働者から年金保険料を集める方便とか。 安倍さん、「愛国心」や「美しい国」もいいが、「真面目に働けば、人間らしい安定した生活が送れる」、「普通の世の中」にしなくちゃ。(だだっ児)

(2006.12.1)

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