農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂

山居倉庫・近代遺産?

 11月半ば、山形庄内・酒田まで行く用事があった。上越新幹線で新潟経由、羽越本線に乗り換え、都合4時間半ほどの長旅である。途中、長岡駅の構内で「米100俵の精神が息づくまち」の大看板が目についた。「国が興るのも ほろびるのも 町が栄えるのも 衰えるのも ことごとく人にある」という、長岡藩末期の大参事・小林虎三郎の有名な言葉だ。
 この「米100俵の精神」といえば、小泉前首相を思いだすが、それはさておき、今、教育界はいじめ自殺、履修漏れ問題などで大揺れ。そんな中、教育基本法の改正で、タウンミーティングの「やらせ」が問題になっているが、どうもいまの日本人は、小林虎三郎の爪の垢でも煎じて飲んで出直さなければならないようだ。それにしても、安倍首相はなぜ教育基本法の改正を急ぐのだろう。改正すれば、いじめ自殺や不登校はなくなるのだろうか?
 さて、目的地の酒田には庄内米を保管する山居倉庫がある。この倉庫は明治26年建設というから100年以上の歴史を持つが、今なお、現役の農業倉庫として活躍している。白壁の土蔵造り、二重屋根構造、倉庫の西側にはケヤキが並び海風や西日を避け、通年、温度変化が少なく、湿度も一定にする工夫は、いわば、自然のエアコン装備。その素晴らしい景観・構造美は、郷土の生んだ偉大な写真家・土門拳もカメラに収めている。
 ただ、山居倉庫も10数棟のうち1棟は庄内米歴史資料館、2棟は物産館などに衣替え、庄内・酒田観光の拠点になっている。また、先頃では、毎日新聞主催の「ヘリテージング100選」、すなわち明治・大正・昭和(戦前)期に建造された「近代遺産(ヘリテージ)」として読者から推薦されている。ヘリテージングとは、「懐かしい」「めずらしい」など、見る人に感動を与えるような外観を備えた建築物を観光の対象として楽しむ新しいレジャーとか。
 しかし、この倉庫はまだ現役。近代遺産? 観光施設? では妙にひっかかる。でも、建物は永遠ではないことを思えば、今のうちに、先人のつくった貴重な遺産を一般の人に見てもらうのもいいことかもしれないと、自分を慰める。近代遺産、否、いっそうのこと世界文化遺産に推薦してはどうだろう。なにせ、この国は「瑞穂の国」、庄内は「天恵の沃野」、山居倉庫はそのシンボルなのだから...(だだっ児)

(2006.12.8)

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