農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂
新農協ビル

 先日、といっても、3月末「東京ミッドタウン」がオープンする前の週、「勝ち組」の居城といわれる「六本木ヒルズ」に行く機会があった。例のアメリカ前副大統領アル・ゴア氏のドキュメンタリー映画「不都合な真実」を観に、ノコノコ出かけたのである。映画の感想は別の機会に譲るとして、六本木ヒルズの中心にそびえる森タワーは高さ238メートル、まさに巨大な洋館、城。
 城といえば、先の能登半島地震で、400年以上もの間、厳しい自然環境に耐えてきた七尾城跡の石垣が高さ3メートルにわたって崩れたそうだ。しかし、この六本木ヒルズをみると、地震の心配なぞ微塵も感じさせない。巨大都市東京は永遠に存続する気にもさせる。そのうえ、都知事三選を果たした石原慎太郎氏は、東京に再度オリンピックを呼び、都民の「心の財産」にしたいと言いだす。
 その東京は、日本の格差社会の縮図といわれ、先の六本木で働く人の間で、「食べ物までおカネの味がする」という言い回しが広まっているやに聞く。傍らで、漫画喫茶をホテル代わりにして日雇い仕事を待つ若者や健康保険料を払えず病院にもかかれない人など、弱者がますます社会の片隅に追いやられる姿をみせられる。こんな世の中をみると、オリンピックが「心の財産」なる言い草は、成功者、石原都知事のパフォーマンス、驕りにしかみえない。
 一方、その東京に新たなJAグループの結集拠点となる新JAビル(仮称)が建設されるという。地下3階、地上37階、両隣には日本の経済界をリードする日経新聞と経団連ビルが立つ。最近あまり農の記事が目だたない日経や、何かと農業にくちばしを入れる御手洗会長率いる経団連が両隣では、何となく窮屈な感じもするが、見方を変えれば農業は依然、国家運営の支柱ともとれる。是非それこそ、「田園立国」にふさわしいビルにしたいものだ。
 しかし、東京一極集中、巨大都市化にひきかえ、先の新潟中越地震や能登半島地震など、あるいは06豪雪など自然災害が起こるたびに、地方の荒廃やそこに置き去り(?)にされ、被害に遭うお年寄りの姿がテレビに写しだされる。たった50年ほど前、そこはわれわれが駆けずり廻っていた古里であり、今住むお年寄り達はわれわれを育ててくれた親たち。新JAビルもいってみれば彼等、先人たちの汗と努力の結晶なんだろうと思う。ならば、ここは一つ、新JAビルも「農」を「人々の力」で助け合う「農協のビル」、「新農協ビル」にしてはどうだろうか...。(だだっ児)

(2007.4.18)

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。