農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂
「食の危うさ」は、なぜ?

 旧正月、中国でいう春節はとっくに過ぎたが、中国製冷凍餃子の農薬汚染問題は一向に解決をみない(2月20日現在)。中国側は表向きは、北京オリンピックを控え、解決に前向きの姿勢をみせているが、出荷元・天洋食品が「我々は(も、の間違い?)、被害者だ」との姿勢を崩しておらず、日中双方、事件をどう片つけるか、不謹慎な言い方かもしれないが興味深い。
 この事件から、消費国・日本は何を知り、何を学ぶべきなのか、メディアは連日その切り口を示してくれるが、大きくは、食のグローバル化が進むなかで、「食の安心・安全」をいかに確保するかなのだろう。だが、この事件、つきつめれば、減反を進めてもコメが余り、食料自給率が40%を切った日本農業の現状に目を向けるべき問題だと思う。なにせ、たかが餃子が遠く離れた外国の工場で製造され、冷凍保存した食品を口にすること自体の「おかしさ」、いや、「食の貧しさ」に我々消費者は気がつくべきではなかろうか。
 先日(2/15付毎日新聞)で、ある読者が、私が掲げる食生活の理想として、(1)国民が食べる食料は自国でつくる(2)地産地消を推進する(3)料理に手間を掛けることを良しとする(4)安全な食品には相応の代金を払う、とあった。まさに、このとおりで、どこかの首相が今更「食料の海外依存は危険だ」(1/18衆院予算委員会)などと、うそぶくのとは大違いの立派な見識。
慶応大学教授・金子勝氏は著書「食から立て直す旅」(岩波書店)で「あと10年もすれば、日本の農山村は地滑りを起すように崩壊していくだろう」と警告している。しかし、政府・与党はこうした農山村の危機をよそに、道路特定財源とやらで、10年で59兆円もをかけ、道路をつくるというが、立派な道路ができても、農山村が消え、国民が飢えてはそれこそ「元も子もない」こと。この財源をそっくり10年間農山漁村振興に注ぎ、食料自給率を上げ、「食の安心・安全」を確保するのが、21世紀日本民族生き残りの確かな道。
 「食の安心・安全」は、「生きとし生けるもの」の基本。でも、先にこんな歌に出会った。「健康茶無農薬米手造味噌 百まで生きて何をせよとか(山埜井喜美枝)」(日本農業新聞・名句と名歌)。解説に、「おそろしいほどの健康ばやりに、作者はそこに皮肉な視線を投げかける」とあったが、じつに人間様が生きていくのは難しい。いや、人間様だけでなく、我が家の愛犬の好物ササミチップスは、原産国「中国」とある。いやはや、どうしたものか…。(駄々っ子)

(2008.2.21)

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