農水省の常識?
「農水省“指導”行き過ぎ 無農薬表示削除迫る」。たまたま、所要で福岡に出かけたときに手にした3月5日付け、西日本新聞朝刊の一面トップの見出し。記事によると、農水省は農薬・化学肥料の農産物表示特別調査なるものを全国で実施した過程で、「無農薬」と表示していた農家や小売店に対し、表示をやめるよう「指導」。特別栽培農産物には、法的拘束力はないのに、農家らが表示をやめたかどうか「確認」を名目に農水省が文書への押印を迫ったため「行き過ぎた指導」ではと問題提起した記事である。
「農家が最終的な責任を負って表示すればいいのであって、農水省が指導し、言葉を独占するものではない」と、アイガモ農法で無農薬米を生産している農家は憤る。消費者は食の「安全・安心」を求める。農家もそれに応えようとする。それがお互い行き過ぎては摩擦が起きる。その調和をはかるのが「常識」という物差し。これが日本人の問題の処し方のはずだが、先の例のように最近は常識はずれ、ジーメンまがいの行政指導が目につく。
そんな中、「全頭検査は世界の非常識」発言。おまけに「安全・安心に縛られていたら、いつまでも結論は出ない」と受けとれる発言も。生産現場を「安全・安心」でギュウギュウ絞め、国内の生産牛に全頭検査を強いておきながら、この発言は非常識。一昔前なら、こんな発言をしようものなら、即座に進退問題。でも、野党いや、次期政権政党?の民主党が「大臣こそが非常識」というくらいで、大臣罷免問題はうやむや。JAグループも抗議声明を出すぐらいで、大騒ぎしない。これも非常識…。
そして、極めつきは食料自給率目標問題。カロリーベースに加えて、生産額ベースを持ち出す。カロリーベースでは農家の野菜・果実や畜産物の生産努力が自給率に表れないからだという。野菜や果実はともかく、畜産物に穀物飼料は欠かせない。その飼料は麦類、とうもろこしなどの外国産穀物が大半。飼料自給率はたったの24%。この考え方も非常識。
「日本の常識は世界の非常識」はかつて、評論家の竹村健一氏が流行らせた言葉。これが「業界の常識は社会の非常識」あるいは「企業の常識は世間の非常識」にまで流行したが、今や業界、企業のみならず、行政、政治家、いや、国民皆が非常識になったのやも知れない。
(だだっ児)