「安全を売る」に徹して 「環境問題」を追い風に売上げ伸ばす 国際衛生(株) 社長 岩間辰郎 氏 インタビュアー:坂田 正通 (農政ジャーナリストの会会員)
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◆ 世界文化遺産を守る仕事も −−『国際』という社名にはどんな由来があるのですか。
岩間
「戦争直後、駐留軍の施設や軍艦、車両を消毒する仕事をしたことに由来します。会社設立は昭和21年ですが、前身は戦前の日本除虫研究所です。52年に昭和電工グループに入り、平成11年に実質的に昭電の100%子会社であるエス・ディ−・エス バイオテックの100%子会社となりました」 −−意義深いお仕事です。 岩間 「お寺の仏像をはじめ、博物館や名家などが所蔵する古文書や襖絵、屏風絵などの虫食いも防いでいきたいと思います」
−−パナプレートとは、どういう薬剤ですか。 岩間 「ジクロルボス(DDVP)という殺虫剤を樹脂に練り込んだ蒸散剤です。そのプレートを天井や壁などに吊り下げておくと成分が気化し、空気中に広がって害虫を殺します。効力は屋内で約3ヵ月です」 −−ぶら下げるだけとは実に手軽ですね。人畜への影響は? 岩間 「じわじわと揮散しますから人畜への影響はほとんどありません。それに残存性や吸着性の少ないのが特徴です。一方、気化成分は、わずかな隙間にも及びますから、隠れた害虫にも効きます。予防効果もあります」 −−対象となる害虫は? 岩間
「パナプレートには医薬用、農薬・樹木用、文化財用の3種類があります。いずれも害虫の中枢神経を麻痺させて死に至らしめる効果があります」 −−文化財用はユーザーが限定されますね。 岩間
「そうです。文化財保護は、わが社の仕事の1部に過ぎません。パナプレートは非常に幅広い分野で利用されており、わが社の主力商品です。とにかく吊り下げ型殺虫剤の代名詞になっている商品で、年間約250万枚が出回っています」 ◆ 注目を集める殺虫ロボット −−その他の商品展開とか、ヒット商品はいかがですか。
岩間
「パナプレートの弟分でベーパーセクトを組み込んだ『ベーパーセクト&ウイズ』という殺虫ロボットがあります。無人となる夜間にタイマーで作動し、ゴキブリなどを退治します。夜間稼働なので経済的で、人体にも影響しません。ファンで殺虫ガスを放出し、隙間の害虫まで確実に駆除する、コンパクトなシステムです」 ◆ 専門家の比率が高い陣容が自慢 −−事業内容を整理していただくと、どうなりますか。
岩間
「殺虫剤および関連器材の製造・販売と、防虫管理です。全国の9営業所で防虫管理を中心とした仕事をしています。内容は燻蒸と消毒、その他環境衛生管理作業全般です。取引先には食品関連会社の多さが目立ちます」 −−売上高は?。 岩間 「雪印乳業問題から防虫管理への関心も高まり、昨年後半から前期比10%近く売上げが伸びており、今期(9月期決算)は20億円を超えそうです」 −−安全・環境問題が追い風になっているようですね。 岩間 「『安全を売る』会社としてクリーンな環境づくりに一層努めます。オゾン層破壊の心配がある臭化メチルが2005年に使用禁止になりますから、いち早くリン化アルミニウムを使ったフミトキシンという代替剤を発売し、燻蒸に用いています」 ◆ 農業倉庫やCEへPMSSを開発 −−農業倉庫やCEの保管管理手法も変わってきますね。 岩間 「ええ、減農薬米や有機栽培米が増えてくることもあるし、化学物質を使った防虫管理は減少する方向にあると思います。品質保持と管理コストの低減を図る上から、害虫発生前の予防が求められます。このため害虫管理支援システム(PMSS)を開発して3年前から農倉基金の協賛で研修会を開くなど殺虫剤使用を減らすことに努めています」 −−どんなシステムですか。
岩間
「予防の前提は発生予察ですから、事前調査をします。調査器材は、コクゾウを粘着板で、またメイガ類をフェロモンで捕捉するなどのトラップ(わな)を使います。そうした手法を駆使した発生予察によって初期の予防処置を実施します」 ◆ 日本農業は途上国の追い上げを見通すことが必要 −−さて、日本農業の今後をどうみておられますか。
岩間
「私は昭和電工の出身で、国際衛生にくる前に、昭電からインドネシアに派遣され、テレビのキャビネットを現地生産する工場を立ち上げました。その時の観察では、もし、この国の農業が発展し、農産物輸出国に転じたら、日本の農業は大変なことになると思いました」 −−保冷技術など物流面も進歩していますからね。 岩間 「日本農業は、国際化の中でそうした途上国の開発や追い上げも見通す必要があります」 −−最後に、ご趣味のことを語って下さい。 岩間 「農家出身のせいか趣味は園芸です。近所の農家から100平方メートルほどの畑を借りて季節のものを作っています。それから鉢植えの花木も楽しんでいます。種類が多いのですよ。ほかには釣りとゴルフです」。 −−ではどうも貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて 岩間辰郎社長
岩間さんの実家は三重県亀山市の農家。長男が農業の後を継ぎ現在でも五町歩を耕す農家。そのお兄さんにインドネシアの農業を視察してはと勧めているのだという。美しい棚田あり、苗代、田植え、稲刈りなど昔の日本と同じで全て人手で農業をやっている。 |