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この人と語る21世紀のアグリビジネス
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JAグループは自己完結型の ビジネスモデル ―― 問題は専門性など 住友化学工業(株) 取締役・支配人 多田 正世 氏 インタビュアー:坂田 正通 (農政ジャーナリストの会会員)
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◆ 統合や買収で大きく変化する国内外の農薬メーカー ―― 4事業部門のうち農業化学部門の売上高は、約12%ですが、それでも他の大手化学各社と比べると大きいですね。 多田 ええ、肥料がありますし、家庭用や防疫用の殺虫剤、それに畜産用の飼料添加物などの製品もありますから。それらを除いて農薬だけに限りますと、連結ベースで900億円近い売上高です。 ―― 農薬メーカーの世界ランキングでは何位ですか。
多田
一昨年は11位でしたが、上位の海外メーカーが統合や買収などの再編で減っていますし、一昨年買収した事業も寄与しますので、今年は8位に上がるのではないかと見ています。
◆ 情報チャネルの一本化で現場の情報をフィードバック ―― 外資系が日本で直販に切り替えたわけですが、それについてのご感想はどうですか。 多田 欧米では原体メーカーが子会社をつくって製剤・販売をしています。私は海外の子会社にいる当時から、日本でもそうなるだろうとみていました。 ―― しかし日本では、日本の製剤メーカーを使ったほうが効率的だと、海外メーカーは見ていたのではありませんか。
多田
ところが5年前にモンサントが直販に切り替え、他社も、そのほうが効率的だと考え直し、追随したわけです。 ―― 海外から見れば、日本の流通システムは複雑だというとらえ方が必要ですね。 多田 そうです。だからモンサントが直販を始めた時に「他社も追随するのは間違いない」と私は問屋や製剤メーカーにいいましたが、その時は、もう1つ信用されませんでした。 ―― まだ直販に切り替えていない海外原体メーカーがありますが、日本の製剤・販売業界の今後を、どう見ますか。
多田
今、果たしている機能をどう評価するかですね。1つは製剤技術、2つ目は普及、これは製品の使い方や安全性の技術的な説明です。3つ目は物流、4つ目は債権回収、大別して、この4つの機能の評価です。 ◆ 住化と三井化学の全面統合で合併効果を発揮 ―― 住化の農薬事業は水稲用殺虫剤パラチオンの国産化から始まったといいますが、展開過程を少しお聞かせ下さい。 ―― 海外展開は? 多田 21カ国に現地開発販売会社などがあります。 ―― 三井住友銀行ができますが、住化と三井化学の統合スケジュールはどうですか。 多田 2003年を目途に全面統合をすることを昨年11月に合意し、今年10月にはポリオレフィン事業で統合を先行実施します。名称は三井住友化学工業株式会社ですが、英語では住友三井ケミカルで、略称はSMCCとなります。 ―― 統合効果については、どんなところをねらいますか。 多田 両社の商品構成では、困るような問題はありません。効果は出やすいと思います。 ◆ 系統の自己完結型の事業と組織に敬意
多田 最近というのは誤解ですね。肥料は別として農薬では、もともと系統向けメーカーとの取引が多いのですよ。全農とは平成10年からエスマルクという生物農薬を直販の形で取引をはじめ、系統メーカーのひんしゅくを買いましたが、全農との関係を一層強化するステップとなりました。 ―― しかし、中身がね。農協職員の人事異動による専門性の低下や、販売力の弱さなど問題が多いのです。一方、肥料購買などでは「看板」を回せば注文が集まるといった効率の良さもあるのですが、協同組合組織の優位性の上にあぐらをかいているという面があります。 ◆ 圧倒的多数の消費者がバックアップしてくれる農政に 専門性の問題では、プロの農業者が、プロでない営農指導員に嫌気がさして農協から離れていくという面がありますね。 また商系の資材業者は、はしこいというか柔軟性がある、それとの競争に耐え抜く専門性が必要です。金融や共済にしても専門業態との競争ですから、そこは、農協の内部でプロ集団を養成するよりも、アウトソーシングしてはどうでしょう。 農協のビジネスモデルは基本的に強力ですから、このように資材購入、農産物販売、金融、共済等の各ユニットモデルの改善で効率的に専門性を強化できると思います。 ―― 多くの示唆をいただきました。最後に全体として日本農業をどう見ておられますか。
多田
悲観と楽観のないまぜといったところでしょうか。新しい基本法による政策が出ていますが、消費者の生活が農業との関わりでどうなるのか、そこがわからない。食料自給率の向上でも半信半疑の消費者が多いと思います。基本法はやはり生産者側の論理に立っています。 ―― では、どうも貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて 誰に聞いても多田取締役の評判は良い。ビジネスの本質的な議論ができる。目から鼻に抜ける理論を展開する人。その上責任感強く、部下、家族想いという人もいた。インタビューしてみると多田さんは世評どおりの人であった。 |