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この人と語る21世紀のアグリビジネス
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直接販売75%目ざす
ノーベル賞・野依教授の成果も活用して |
シンジェンタ ジャパン(株) デニス・ターディ社長
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−−最初に、フランス農業の特徴をお聞かせ下さい。 ターディ 農業はフランスの主要産業の1つです。輸出品目の上位リストにも農産物がいくつか並んでいます。穀物、チーズ、肉、果実、ワインなどです。日本向け輸出ではルイビトンなどのブランドものに次いで2番目がワインです。最近は農産物に付加価値をつけて輸出しようとする傾向が強くなっています。 −−日本は生産コストが高くて農産物を輸出できません。フランスの生産費はどうですか。 ターディ 生産性が特に高いわけではないと思いますが、経営規模が大きく600から400ha程度の畑作農家もあります。特徴的な制度を1つ挙げますと、チーズでは生産過程が基準通りなら、プレミアつきで販売できるシステムがあります。政府が特別のラベル表示を許可する形式です。世界最高品質のシャンペンやコニャックの品質と価格も同じような制度で守られています。 −−食料自給率は? ターディ 140%ですから自給率は話題になりません。問題になるのは余剰農産物の価格低下や輸出です。農家数は年々減る傾向です。特に、欧州連合(EU)が、55歳で農業経営を次世代に譲れば優遇するというリフォーム施策を打ち出したので、さらに減少しつつあります。
−−リフォーム施策というのは息子に経営を譲るのですか。 他人でもよいのです。耕作農地を誰かに貸すことにより1軒あたりの農地面積を拡大し、生産性を上げるのが目的です。 −−農家の生活は? ターディ 大規模農家やシャンペン用などの特別のブドウを作っている農家は豊かですが、反面、苦しい小規模農家もあります。 −−収入はどうですか。 ターディ 極端な例かも知れませんが、中山間地に多い小零細農家は最低賃金制レベルの年間100万円ほどでしょう。これは日本の物価水準でいえば200〜300万円くらいですね。それに自給自足だから現金はいりません。大規模農家のほうは600万円から1000万円ほどでしょう。 −−さて、食料危機の予測があります。その中でアグリビジネスの役割をどう考えますか。 ターディ この50年、人口の飛躍的増加に伴い農業生産も質量ともに目覚ましく向上しました。その一端には農薬と種子の業界の貢献があると思います。今後の問題は必要な量を環境にやさしい方法で生産することです。当社は持続可能な農業について、いろんな方策を出しています。
−−シンジェンタの日本での主な事業活動をご説明下さい。 ターディ 日本は世界の農薬市場で第2位の規模です。フランスより大きく、当社のビジネスへの貢献度でも第4位ですから、戦略上非常に重要です。当社は世界のほとんどの国で20%以上のシェアを持ちますが、日本では9%に過ぎません。まだまだ伸びる可能性があります。 −−シェアが低い理由は? ターディ 当社の前身の2社が日本の製剤メーカーを通じた販売に重点を置いてきたことに起因していると思います。日本には、当社のような有効成分(原体)のメーカーから原体を購入する製剤メーカーが7社ほどあり、それぞれ商品を開発、販売し、使い方まで指導してきた基盤が強固です。そうした中では、直接市場に食い込む力が弱かったのだと思います。 −−今後は直接販売をどんどん広げていきますか。 ターディ 合弁会社トモノの株式100%取得で、当社は三社合併の形となり、直接販売の体制を整えました。10月からは営業本部を拡大し、農薬には130人を配置しました。また研究開発部門への投資も増強しました。 −−JAグループなどのユーザーからは歓迎されても、業界からは評判が悪いでしょう? ターディ 製剤メーカーから反発を食らっているのは確かです。しかしグローバルなレベルでは農薬企業の統合・再編成がほぼ終わり、それぞれ直販のために最低限必要な規模に達したと思います。だから製剤メーカーとしては、そうした市場の変化に対応する企業戦略の確立が必要になっていると思います。
−−パテント切れのジェネリック品をどう考えますか。 ターディ これは新しい問題ではありませんから処理できます。私たちには、より効果の高い新製品を研究し開発する能力があるし既製品のライフサイクルをさらに改良する手段もあります。革新的な製剤を生み出すこともできるし、ジェネリックに打ち勝つ力を十分に持っています。 −−日本農業は米国から攻められて市場を開放したところ、今度は中国からの野菜輸入が急増しました。フランスのように農業を強くする上でアドバイスがあればお聞かせ下さい。 ターディ 常に消費者の視点から始めるべきだと思います。農家は消費者が望む作物と値段を知り、それに応える作物を提供できるようにすることです。また私たちには、安心で新鮮な作物を作る農家の仕事を、お手伝いする使命があると思っています。
ターディ もう1つ、輸入増加ばかりを心配しないで、反対に輸出できる農産物を考えてはどうですか。例えばカキやナシなどは輸出できると思います。守りだけではなく攻めの体制に移るべきです。日本の農産物は、よその国に比べて非常に品質が高いから、もっと楽観的になって、品質を誇ってもよいと思います。 −−では最後に、ご趣味について語って下さい。 ターディ サッカーで日本対フランスの決勝戦を見たいです(笑い)。スキーも好きです。仕事の上からは、ゴルフをもっとやらないといけないと思います。 −−では、どうも多面的なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
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