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この人と語る21世紀のアグリビジネス
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振幅激しい市況産業の中 堅実経営に徹する 古賀 啓 飯野海運(株)常務取締役 |
聞き手:坂田正通(農政ジャーナリストの会会員) |
◆長い提携関係のポイントはやはり『信頼』です
―農業と船会社は物流で関係が深く、とくにJA全農としては肥料専用船「JAアラジンレインボウ号」と「JAアラジンドリーム号」をチャーターしている飯野海運との付き合いが長い。まずそのきっかけをお話下さい。 ―直輸入は大量輸送で単価を下げる発想でした。しかし商社にとって輸入肥料はドル箱だったから食い止めを図りました。 「それで財閥系商社は『全購連に船を回したら、ほかの荷を運ばせないぞ』などと系列の船会社に圧力をかけました。そこで非財閥系の私どもが『うちがやりましょう』と引き受け、全購連さんに感謝されました」 ―今はヨルダン肥料の開発輸入に合わせた『ドリーム号』と『レインボウ号』ですね。 「来年春には、その『JAアラジンドリーム号』に替えて、最新鋭の2代目が誕生する予定です」 ―長い提携関係のポイントはやはり『信頼』だと思います。 「そうです。お互いの切磋琢磨もあって築かれました。ヨルダン肥料を含め全農さんの肥料輸入の6割ほどは私どもで運ばせてもらっています」 ―常務さん個人としても全農との付き合いは長いですね。 「入社以来35年間お世話になっています。ヨルダン工場の完成式典にも当時の社長と共に参加させていただきました」 ◆中国の荷動き増えても残留農薬野菜は運びたくない ―飼料輸送はどうですか。 「残念ながら現在はわずか数%で一ケタ台です。ちょっと説明しますと、世界の海上輸送量は、2000年で約19億トン。うち鉄鉱石、石炭、穀物の合計が約12億トンで6割強。これを3大メジャー貨物といいます。飼料は穀物の中に含まれます。肥料はマイナー貨物に分類されます」 ―海上運賃というのは、どんな値動きをするのですか。 「市況産業であり、需給関係で乱高下します。景気が良いと荷動きが増え、船が不足して運賃が上がるから、新しく船を建造して増やす、すると運賃が下がる、景気が悪くなれば、さらに落ち込む。海運市況は基本的にその繰り返しです」 ―中国からの農産物輸送はどうですか。 「私どもは運んでおりません。それに残留農薬の問題があるから、私としては余り運びたくありません」 ◆真っ先にリストラにさらされた海運業 ―7月20日は『海の日』です。海運立国といわれた時代もありましたが、日本の海運業は真っ先に国際競争にさらされてリストラも早かったですね。 「ええ。82年に約33000人いた日本人船員が昨年は10分の1以下に激減しました。一方、日本の会社が支配する外国人船員は現在約50000人と見られます。日本人と比べ、給料というか船員費には大きな差があります」 ―禁酒法がリストラにつながってくるとは驚きです。ところで運賃はドル決済ですか。 「当社は約75%がドル収入(前期決算)です。一方、費用は約55%がドル決済です。だから円高は困るんです。しかし荷主さんは原材料輸入をされる方々が多く、全農さんも円高歓迎ですから、その点、利害が相反します。しかし基本的には為替レート変動による収益の大幅な差はできるだけ縮めたいと思っています。費用のドル化率を上げることも課題の一つです」 ◆コメは日本の食文化の中心 ―農業全体からすれば円安のほうが良いのですよ。円高ですと肉でも野菜でもたくさん輸入できますから。さて、肥料や飼料の原料を輸送する海運業は、日本農業を支える裏方ともいえます。今後の日本農業はどうあるべきだと思われますか。 「農業問題には国策の視点が必要です。最近は食の話題が多いですね。ここ10年来、日本人は食料に限らず安いものを求める傾向ですが、中国野菜の残留農薬問題はそのしっぺ返しの感じです。安全安心は、ある程度カネで買う必要があります」 「私は福岡県朝倉の農村地帯出身で、センチメンタリズムも含めて田園は私の原風景です。それを持続させるためにも農業をきちんとやってほしい。消費者として私たちが食べるものは日本で作ってもらいたい。自給率を高めるためにも、気概を持ってうまくて良いもの、付加価値の高いものを作ってほしいと思います」 ―最後に飯野海運の会社概要をお聞かせ下さい。 「1899年に創業者が京都府舞鶴市で海軍に石炭を納入する飯野商会を設立したのが始まりで、艦艇の燃料が重油に切り替わるのに伴い当社もタンカー部門に進出して業容を拡大しました。太平洋戦争の真珠湾攻撃では海軍の要請で高速タンカーを建造し、船足の速い艦艇に燃料油を洋上補給したというエピソードもあります」 <会社概要>
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