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この人と語る21世紀のアグリビジネス |
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◆高い信州味噌の全国シェア
――御社は長野県経済連(現・JA全農長野県本部)の味噌事業を継承され設立されたのですね。 柳澤 長野県経済連の加工所でしたが、昭和30年10月に独立し株式会社になりました。 ――初代社長の中垣貞男さんは長野県経済連の方ですね。 柳澤 経済連の専務理事を務められていた方です。 ――信州というと味噌というイメージが強いですね。 柳澤 そうですね。味噌の全国シェアでみると、46〜47%は信州味噌だと思いますね。今後たぶん50%を超えるのではないかと思っています。 ――味噌には信州という土壌が合っていたのですかね。 柳澤 1日の寒暖の差が激しく発酵食品に適していますね。 ◆味噌汁を飲まない若い人 米と連動する味噌の消費 ――御社のホームページ(http://yamajirushi.co.jp/)で拝見したのですが、年間に飲む味噌汁が1人当たり162杯で、味噌の購入費が1戸当たり3000円ということで、かなり少ないですね。私の家ではもっと多いと思いますが… 柳澤 団塊の世代以上か以下で違いますね。とくにいまの若い人たちは、平均すると週1回味噌汁を飲むかどうか。その程度になっていますよ。 ――そんなものですか… 柳澤 大家族のなかで育っている若い人は飲んでいますが、学生さんのように単身で東京などに出てきた人は飲んでいないと思いますね。 ――味噌会社の実績をみると伸びていますね。 柳澤 業界全体をみると、量的には落ちています。味噌の消費の90%は味噌汁で、お米の消費と連動しているんです。 ◆「仕込み味噌」をベースに一般市場へも目を向けて ――御社ではどうですか。 柳澤 私どもには、農家が自家醸造していた味噌の手間のかかる部分を私どもで仕込み、それを秋から冬にかけて農家の方に買っていただき、夏の暑い時期に発酵させていただくという「仕込み味噌」という系統向けの商品があり、最盛期は売り上げの半分以上ありました。昭和50年までは長野県の丸子工場だけでしたが、「仕込み味噌」が急激に伸びてきましたので、茨城県水海道にあった全農の加工所を借りて、専用工場(現・関東工場)にしました。 ――マーケットへの対策などは業界としてどうしているのですか。 柳澤 全国味噌工業協同組合連合会(全味)に「みそ健康づくり委員会」という委員会があって、ここがイベントやPR活動をしています。ここの内容は当社のホームページからもリンクしています。 ◆人に優しい日本伝統の発酵食品 ――味噌は高血圧に効果があるとか、脳にもいいとか、健康食品なんですね。 柳澤 他の商品だとテレビなどでその効用がいわれるとすぐに売れるわけです、ココアのようにね。ところが味噌は、どこの家庭の冷蔵庫にもあるので、テレビでいわれても量が増えませんね。お米もそうですね。 ――味噌の一番のポイントはなんですか。 柳澤 味噌は、自然と環境の中で発酵させる日本伝統の発酵食品で、人間の胃に優しい食品です。これが基本ですね。 ――朝食に味噌汁を飲むと解毒作用があって二日酔いにいいとかもいわれますね。 柳澤 漢方薬と抗生物質を比較したときに、抗生物質は速効性がありますが、漢方薬には速効性はありませんね。それと同じで、持続して継続して味噌汁を飲んでもらうことですね。 ――塩分を摂りすぎるのではと心配する人もいますね。 柳澤 味噌汁のための具材を奥様方が買ってきているかですね。緑黄色野菜や芋類、海藻類のワカメなどカリウムを多く含んでいるものを具としてたくさん入れると、カリウムが塩分を体外に排出しますから、心配はいりません。それから、塩分含有量が多くても、味噌汁になったときは、塩分濃度は1%くらいになっています。 ――原料は国産中心ですか。 柳澤 農協系統をベースにした会社ですから、すべてとはいきませんが、他社よりも国産のウェイトが大きいと自負しています。とくに農協関係のメイン商品は国産大豆100%ですし、米はすべて国産です。ただ、表示問題が厳しくなって国産大豆の需要が高まり、価格が上がってきているのが悩みですね。 ――海外でも事業をされていますね。 柳澤 昭和50年に味噌生産工場としてミヤコ・オリエンタルフーズという会社をカリフォルニアに設立しました。日系人をベースにしていますが、米国には寿司バーがたくさんあり、そこで味噌汁を知るようになって健康食品だということで需要が増え、順調ですね。最近はヨーロッパでも味噌の評価が高まってきています。 ◆味噌の技術を応用し、新たな調味料を開発 ――味噌以外ではどのような商品がありますか。 柳澤 中国の辛味噌で、麻婆豆腐に使われる豆板醤(とうばんじゃん)とか北京ダックを食べるときなどに使われる甘い味噌の甜麺醤(てんめんじゃん)や韓国の蕃椒醤(こちゅじゃん)という唐辛子を発酵させて味噌にしている「醤」(じゃん)関係があります。現在、売り上げの半分は味噌ですが、この醤関係が35%を占めています。 ――これからはその方向でいかれるわけですか。 柳澤 基本は自然の発酵をベースに植物・有機物を発酵させて、人に優しい商品づくりをしていくことです。まだ東南アジアにはいろいろな発酵食品があると思いますので、そうしたものを含めて、日本の味噌、中国や韓国の辛味噌を組み合わせた新たな調味料やうまいものをつくっていきたいと思っています。 ――21世紀は発酵食品の時代だという人もいますしね。 柳澤 最近は科学が発達して、うまみ成分とかを単体として引っ張り出しサプリメントとして売り出していますが、それが本当に体にいいのかと思いますね。むしろ自然の発酵でうまみを出すことの方が、人間の体に安定したエネルギーを供給できるのではないかと思っています。 ――最後に、JAグループあるいは農業に望むことは… 柳澤 一つは、自給率が40%しかなく「日本人は何を食べていくのか」と思います。日本人が安心して食べられるよう自給率をあげて安定供給できるようにして欲しいですね。そういう意味で農協さんも、農家が悩んでいる営農や栽培に力を入れていただきたいと思いますね。 ――ありがとうございました。 |
インタビューを終えて 柳澤社長は、会社創業から数えて5代目の社長。厳父は全農長野、統合前の長野経済連に勤務していたというからプロパー社長でも心底から系統組織シンパである。昭和60年をピークに農協向けの売上が落ちているのを心配しておられる。農協合併による、支所・店舗縮小など味噌の売り場が減少しているのも原因の一つではないかという。その分一般向け味噌が伸びている。和風レストランが増えたし、洋食コックも味噌を入れるとこくが出て西洋料理にも旨みが増すのを知るようになった。なにより味噌は胃袋に優しいアミノ酸であり、発酵食品は長寿への道、長野県は日本一の男性長寿県になったと自信をしめす。長野県の実家はそのまま残して生活の拠点は首都圏所沢市、板橋区成増の本社へは車通勤。息子さん二人。一人は結婚したので夫人と息子一人の3人暮らし。酒は仕事でおぼえたから強い。この時期、旨いのは日本酒という。(坂田) |
(2003.2.9)
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