|
||||
この人と語る21世紀のアグリビジネス |
|
||||
|
◆「酪農との共生」脈々と ――「協同」を冠した社名の由来などをお聞かせ下さい。 「酪農家や農協と一緒につくった会社です、という意味です。昨年、創立50周年を迎えました。創立の背景には酪農運動があります。創業者は吉田正氏(長野県出身、全国農業会常務)で、酪農振興への思いは熱く、今も当社には酪農との共生という理念が引き継がれております」 ――事例を何かお話下さい。 「そうですね。当社の主力集乳地区である長野県に獣医13人を配置しているという体制が1つあります。農家の乳牛を個別にきめ細かく管理し、病気の予防、治療から雑菌対策の指導などまでしています。大手乳業メーカーでも1人か2人しかいない獣医が当社には13人もいるのですから、これは自慢です。このことは、今後のトレーサビリティ(履歴管理)拡充にとっても意味があると思います」 ――株主はどこですか。 「現在の筆頭株主はJA全農です。その他農林中金、農協、名糖グループ等が株主です。協同会社ではないものの、農協色の強い乳業会社といえます」 ◆「競合」でなく「補完」
――では事業概況について。 「当社は総合乳業メーカーで飲用牛乳から乳製品までを生産しています。子会社を除く本体の売上構成は、市乳関係が3分の2、あとが乳品とアイスなどです。市乳関係の内訳は、半分が飲用乳で、あと半分がヨーグルトやプリンなどです」 ――用語が難しいですね。乳品というのは何ですか。 「バターやチーズです」 ――乳品などをつくらないで、利益の出ない飲用乳を主力商品としている会社は苦しいと思いますが、どうですか。 ――日本ミルクコミュニティ(株)の製品である「農協牛乳」「メグミルク」と「メイトー牛乳」の棲み分けはいかがですか。 「飲料は物流費低減のため工場配置を各地に分散させています。しかも当社は他社への生産委託を極力増やしながら、ここ5年間で自社工場を10から5へと再編統合しました。その結果、メグミルクの工場とは競合関係がほとんどなく、むしろ補完関係にあります。酪農家・農協と関係の深い両社は、お互いに切磋琢磨して協力できるところはしていこうと考えています」 ◆進化過程の若い会社 ――ところで、協同乳業の商品開発には「日本初」の工業化などというのが多いですね。 「確かに。振り返ればまず昭和30年にスティックつきの『アイスクリームバー』を出し、くじや長嶋茂雄選手のキャラクター起用が子どもたちに受け、工場前に仕入れ業者の車が並んだと聞いています。これはリニューアルで今も売れているというロングランのヒット商品です。翌31年には、牛乳パックを三角形にしたテトラ牛乳の生産を始めました。主なものだけで「日本初」は合計8件です」 ――特徴のある会社ですね。 「そうなんです。創立50周年といえば普通は成熟期なのに、うちはいまだに発展途上、進化の過程にある若い会社だと思います。私は創業以来の当社のDNAとして(1)酪農との共生の精神(2)品質のメイトーといわれた品質へのこだわり(3)新しいものにチャレンジする進取の精神、の3つを挙げています」 ◆株式上場にチャレンジ 「前社長は『プラン21』という5カ年計画の中でタイミングよく10から5へと工場を再編集約してくれましたが、要員は新しい事業に振り向けたりして希望退職などをやらないで、基盤整備を一応、完了しました」 ――上場とはすごいですね。 「上場すれば製品に対するお客の信頼度や評価の高まりとか人材が集まりやすいとか、いろいろな効果がありますからね」 ――この3月期の決算見込みはいかがですか。 「昨年の冷夏の影響とか低価格取引の中止などで売上げは少し減りましたが、経常利益は目標達成です。利益を出せる体質になりつつあります。乳業大手の経常利益は売上げの3%程度ですが、当社は当面2%を出したいと対策を講じています」 ――需給の変動などによる余乳の処理対策はどうですか。 「余乳は脱脂粉乳やバターなどになりますが、現状は脱脂粉乳が大変な過剰となり、業界あげて対策に取り組んでいます。しかし当社は、脱脂粉乳の生産よりも購入の方が多いので、影響は少ないと思っております」 ◆チーズで仏社と合弁 「ところで、チーズについては世界トップクラスのボングラン社(フランス)との合弁事業で長野県に製造工場を建設し、昨年10月から稼働しました。これまでもメイトーブランドの特殊なチーズを生産していましたが、今後は合弁でフレッシュチーズの生産を伸ばします」 ――最後に、酪農の展望ですが、長持ちのするロングライフ牛乳などの輸入が増えてくるのではありませんか。 「ロングライフ牛乳はずっと以前からありますが、もし需要が伸びれば、船でどんどん輸入されることになると思います。しかし、日本では新鮮なうちに飲む習慣があるせいか、ロングライフ牛乳は余り好まれません。そこに日本の酪農が生き残っていく道があります」 ◆賞味期限と消費者教育 「最近はESL牛乳が出ていますが、牛乳は一回封を切ってしまえば、できるだけ早く飲んでしまわないといけません。いくら賞味期限が2週間などと表示してあっても、開けた後では2週間以内でも品質に問題が出てきます。賞味期限というのは封を切らない間のことですからその点、消費者教育の徹底が必要です」 ――長持ちのする牛乳は、どんな処理をしているのですか。 「完全に殺菌して無菌の状態にしているわけです。これに比べ一般の牛乳は120〜130度の高温で殺菌しますが、その時間は約2秒です。それ以上やると、たん白質や脂肪が変化し、においも出てきて、風味に問題が生じます。だから62〜65度で30分加熱する低温殺菌もあります。つまり品質を変化させないように殺菌をして、消費者に届けているわけです」
(2004.4.15) |
特集企画 | 検証・時の話題 | 論説 | ニュース | アグリビジネス情報 | 新製品情報 | man・人・woman |
催しもの 人事速報 | 訃報 | シリーズ | コメ関連情報 | 農薬関連情報 | この人と語る21世紀のアグリビジネス | コラム | 田園交響楽 | 書評 |
||
社団法人 農協協会 | ||
|