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この人と語る21世紀のアグリビジネス |
日本肥料アンモニア協会 理事・事務局長 和田紘一氏 インタビュアー 坂田 正通 本紙論説委員 |
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◆川上と川下が合併――燐酸肥料協会は昭和41年に日本化成肥料協会となり平成15年には日本アンモニア協会と合併しましたが、和田さんは燐酸肥料協会時代からの事務局プロパーですね。 「そうです。しかし、もともとは農業志望でした。友人からは『農業なんて将来性がないよ』などといわれたりもしましたが、大学は農学部に進み、学生の時には開拓目的で北海道に約20町歩の原野の分譲を申請しましてね」 ――話は飛びますが、大企業を会員とするアンモニア協会と合併した事情は? 「合理化と効率化です。いわば川上と川下の事業者団体がいっしょになった形です。肥料原料をつくる企業をメンバーとするアンモニア協会と、最終製品の肥料メーカーからなる化成協がいっしょになって合理化を目指しました。肥料産業は厳しいですから」 ――原材料価格の高騰について原油なんか以前は30ドルで高いと思ったのに今は70ドルです。製品価格への転嫁はどうですか。 「川上の場合は転嫁を納得いただいておりますが、川下は供給先が農業ですから非常に難しいです」 ――構造改革や意識改革が必要ということですか。 「農業は自分の作った物に自分で値段をつけるのが非常に困難です。流通任せ、消費者任せです。肥料も、そうした構造に立脚していて自分で値段をつけられない面があるのです。また減反拡大の影響をもろに受けるといった具合で肥料産業は農業とともに歩んできました」 ――確かにそうですね。 「日本の肥料業界は輸出産業じゃないから日本農業がなくなれば、消え去ります。だから各メーカーには農業を守ろうという使命感もあると思います」 ◆肥料の輸入は無理――リン酸やカリなど原料確保の状況はどうですか。 「これはもう資源ナショナリズムの台頭で大変です。安値なら売らないというのです。米国は資源保護のため数年前にリン鉱石の輸出をストップしました。ただしリン安などの二次製品なら付加価値がついて高く売れるから輸出するといいます。中国もリン鉱石輸出ストップを考えています。今後は原料確保が大問題です」 ――どんな対策が考えられますか。 「場合によっては共同購入組織をつくることまで検討する必要もあるとの意見も出ています」 ――話は戻りますが、肥料各社は身を削って合理化を進めました。そのため、まだ倒産は出ていないとの見方もあります。 「いえ、川上ではアンモニアもリン酸液もリン安も事業撤退が相次ぎ、尿素は今1社だけ。硫安も10年前に比べ半分になりました。次にくるのは化成肥料からの撤退です。しかし、この生産基盤は残さないと日本農業に対して大変なことになります」 ――親会社の判断で最終製品を供給できなくなる…… 「そうです。しかし輸入すればよいとの声も出そうです。ところが例えば1番近い韓国を見ても安定的な輸出は無理です。需要の季節が同じなので国内向け生産だけで手いっぱいだと思います。EUから持ってくるのも困難です」 ――肥料は重いから。 「重いというマイナス特性があって製品価格に比べ運賃が大変高くつきます。それにしても最終製品を輸入に頼っている国はありません。また農業立国の米国や仏独などは肥料工業が非常にしっかりしています。それに比べ日本の状態はこれでよいのかと悔しい思いがします」
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(2006.5.12) |
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