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この人と語る21世紀のアグリビジネス |
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◆ルーツは江戸時代 ――日本穀物検定協会の歴史は古いのですか。 「穀物などの正確な検量と品質の判定を行う技術能力を持つ第3者機関として昭和27年に(社)東京穀物検定協会が設立されました。続いて各地に協会ができましたが、全国的に検定方法の統一と技術の向上を図ることなどが必要となり、30年に現在の形に統合されました」 ――協会の事業拡大はどのように進んだのですか。 「「発足時は政府米の出庫検定、卸小売倉庫での入庫検定、輸入食糧検定の3業務でしたが、現在は40種類以上の検査・検定、分析業務を幅広く実施しています。事業を通じ、一貫して公正な第3者機関の役割と使命を果たしてきたと思っています」 ――JAグループから依頼される仕事は多いのですか。 「例えば全農と米卸の間に立って産地から卸倉庫に米が届いた時に米穀検定をして、受け渡しを円滑化しています。私どもの顧客はJAから小売店、外食産業、輸入商社など川上から川下にわたっています。輸入農産物は商社の依頼を受け、水際で検査しています。対象は飼料穀物・麦・大豆・MA米などです」 ◆食味ランキングも ――同業他社との競争はどんな状況ですか。 「当協会には永年培った鑑定眼とかノウハウ、またクレームがついた時の処理能力などがありますが、このような技術を持った専門業者は他にありません。だから当協会は民間で唯一の第3者検定機関だといえます」 ――今年度事業の重点や特徴は? 「農産物検査の民営化に対応し、6年前に第3者検査機関の登録第I 号となって新たなニーズに応える業務展開をしています。また最近ではJA農産物検査員の養成指導の他、JAS認定や、近年盛んな地域ブランドづくりのための認証などを実施しています」 ――試験はどのように? 「官能試験と理化学分析の両面から評価しています。評価の基準米は複数産地のコシヒカリのブレンド米です。ランクは5段階で最高が「特A」です。18年産米のランキング結果では、産地銘柄122のうち特Aは17です。生産者にとって特Aの評価を得れば励みになると思います」 ――特A米を作るにはどんな要件が必要でしょうか。 「まずは品種ですね。実際に特Aの7割はコシヒカリ系です。そして生産指導の徹底、それから栽培条件です。一般に多収化を図るとタンパク含有量が上がりますから、食味向上のためには単収を抑えることも重要です」 ◆販売支援していく ――ランクづけは産地間競争を激しくしますが…… 「確かにそうです。競争に拍車をかけたかなという反省があります。しかしブランド化は販売戦略上の重要な要素です。このため最近は、こだわり米とか地域ブランドの掘り起こしに貢献できそうな新品種を参考品種としてランキングに織り込んでいます。昨年は5品種を挙げました。今後も全体を絞り込みながらご要望の参考品種を広くリストアップしていきたいと思います」 ――消費者向けの業務についてはいかがですか。 「『米の情報提供システム』というのを平成16年に開発しました。ご利用が増えています。精米袋にホームページのアドレスを表示し、そこへアクセスすると食味、銘柄、安全性などの情報が得られるという仕組みです」 ――それにしても最近は食品の不正表示事件が多いですね。 「消費者アンケートでも表示を信用していないという回答が増えました。どう回復するかが課題ですが、公正な第3者機関が安全安心の裏づけを確認しているという“差異性”の発揮を“売り”にしていただく時代だと思います」 ――中国の輸出農産物も安全性が問題になっています。最近、特に話題になっていますね。 「中国には国家機関で検検総局(AQSIQ)という組織があり、当会とは農産物検査の技術交流を四半世紀に亘り続けています。さらに交流を深める必要があり、当会は昨年11月に北京に初めての海外事務所である連絡事務所を設置しました。これからも相互に交流を深め安全性確保のために努力をしていく方針です」 ◆自給力向上が重要 「当会には韓国からも毎年見学者がきています。日本の米が高品質なのは穀検が検査業務や食味ランキングの情報を産地にフィードバックさせているからだと見ているのです」 ――DNA鑑定やGMO鑑定についてもう少し説明を。 「米の品種鑑定では医療分野で使われている最新鋭のSNPs法を用いてDNAを解析しています。低コストで迅速に多点数が分析できるようになりました。輸入GMO作物についても水際でチェックしています。国内では一部のJAから大豆の種子を供給するに当たってGMOが混じっていないか確認してほしいといった依頼もあります」 ――最後に日本の食料自給率が40%を切ったことについて、ご意見をお聞かせ下さい。 「世界の人口は増え続け、特にブリックス(BRICs)諸国などの消費量が急増しています。一方で食料生産の環境は地球温暖化や異常気象などから悪化の一途です。食料事情は先行き非常に深刻です」
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(2007.9.11) |
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