農業協同組合新聞 JACOM
   
この人と語る21世紀のアグリビジネス
誰にもチャンスは平等にある それを活かして努力すること
三和シヤッター工業(株)社長 中屋俊明氏
インタビュアー 坂田正通本紙論説委員
 農業倉庫やカントリーエレベーターなどの施設、JAの本・支店から農家の車庫や納屋、商店などなどシャッターを使っているところは切りがないだろう。そんなシャッター業界のトップ企業である三和グループは、国内だけではなく米国・欧州・アジアの4極体制で世界的に事業展開をしている。この10月に持株会社を設立しグループを再編。従来からの事業を継承する三和シヤッター工業(株)の社長に就任した中屋俊明氏にシャッター業界の状況やビジネスの世界からみた農業についてお話を聞いた。

中屋俊明氏
なかや・としあき
昭和21年石川県生まれ。
昭和44年三和シヤッター工業(株)入社。平成8年経営企画部長、10年取締役、12年取締役執行役員、14年常務取締役常務執行役員、16年取締役上席常務執行役員、三和タジマ(株)代表取締役社長、(株)田島順三製作所代表取締役社長、18年三和シヤッター工業(株)代表取締役執行役員副社長、19年代表取締役社長、執行役員社長就任。

◆ステークホルダーから良い会社と評価されるように

 ――まず初めに、この10月1日に社長に就任されたわけですが、抱負をお聞かせください。

 「安全、安心、快適を提供することにより社会に貢献するというのが、私どものグループの使命ですから、これを実行・実践することで、株主・お客さまは勿論、取引先や工事などの協力会社そして社員などあらゆるステークホルダーの人たちから、“三和シヤッターは良い会社だな”と評価される会社にしたいですね」

 ――この10月に持株会社の三和ホールディングス(株)が設立され、御社を含めてグループ会社がその子会社ということになったわけですね

 「今までの三和シヤッター工業は10月1日付で三和ホールディングス(株)という持株会社になりました。そして旧三和シヤッターが行っていた全事業と従業員を4月に設立した会社に事業継承し、その会社を10月1日付で三和シヤッター工業(株)に社名変更しました」

◆日本・米国・欧州・中国で No.1の会社に

 ――そうした主な理由はなんですか。

 「三和シヤッターは昭和31年に兵庫県尼崎で設立され、昨年創立50周年を迎えましたが、当時の事業はシャッターだけでした。その後、昭和44年にドアを47年には窓用シャッターなど住宅建材、さらに自動ドアなどのフロント、間仕切、ステンレスへと事業を広げていきました。
 さらに以前から技術提携をしていた米国のトップブランドであるオーバーヘッドドア社を平成8年に買収しました。平成15年には欧州で第2位のシェアをもつドア・シャッターメーカーのノボフェルムグループを買収して日本・米国・欧州の3極体制を確立しました。
 こうしたグループ戦略と事業を分離し、ガバナンスをしっかりと確立して企業価値の最大化をはかった方がいいということと、権限を委譲して小回りが効く大きさで動いた方がグループの活性化につながるのではないかということで、持株会社にしてその下にグループ会社を配置するという形にしたわけです」

 ――世界的な視野をもって事業展開しているわけですね。

 「私どものグループでは“2010ビジョン”と呼んでいる長期計画があります。その基本方針は、日本・米国・欧州・アジア(中国)の4極体制それぞれでNo.1の事業あるいはNo.1の商品を確立するという構想です」

 ――中国はどういう形になっているのですか。

 「アジアについては、香港をはじめ、台湾、タイ、インドネシアに子会社または合弁会社をつくってきましたが、やはり中国ということで、宝鋼集団公司の子会社と合弁して上海宝産三和門業を設立し、4極体制ができたわけです」

 ――海外と国内の比率は半々くらいですか。

 「6割くらいが国内で4割が海外という感じですが、今後の目標として50:50ないしは国内と海外の比率が逆転という形ですね」

◆工事を制するものが業界を制する

 ――シャッターとかドアというのはけっこう手数のかかる仕事ですよね。

 「普通の工業製品のように工場でつくって出荷すれば終わりではなく、取り付けて使えるようになって初めて製品になるわけです」

 ――取り付けるといっても微妙ですよね。

 「昔から“工事を制するものは、業界を制する”といわれていますが、工事がシッカリしていないとダメですね」

 ――最近はシャッターだけではなく、ホームエレベーターとかリフォームとか事業が広がってきていますね。

 「そうですね。シャッターから始まって、ドア、窓など住宅建材、エクステリア、店舗などのフロントそして間仕切りですね。これらは形あるものですが、一方ではアフターメンテナンスがあります。つまり昭和31年以降取り付けてきたシャッターなどのメンテナンスとか修理です。さらにリフォームもあります」

 ――今後、とくに伸ばしていきたいのは…。

 「とくにこれからはメンテナンス事業は有望ですし、伸ばしていきたいと考えています。シャッターのメンテナンスについては法的な規制がありませんから、ユーザの判断に任されています。しかし、事故が起きることもあるので、メンテナンスの法制化の推進に業界で取組んでいます」

◆景気がいいのは大都市圏だけ

中屋俊明氏

 ――御社からみて日本の景気はどういう感じですか。

 「景気がいいと感じられるのは東名阪だけです。北海道・東北とか中四国、九州はなかなか景気が上向きませんね」

 ――大都市圏から地方へと広がっていく…。

 「いいえ、大都市圏へ人が集まってきていますから難しいですね。当社の強みは全国各地に営業所を持っているという営業力と施工力ですが、このまま地方の活性化が進まなければ全国の営業所網の維持が難しくなりますから、この全国ネットを活かしたビジネスができないものかと考えています。その一つが先ほどのメンテナンス事業ですね」

 ――ホームエレベーターも高齢社会ですから期待できるのではないですか。

 「安全・安心・快適が私どものモットーですが、お年寄りが2階に上がるのも大変だというときに、改築ですぐに取り付けられるシンプルなつくりになっています」

◆農業が元気にならなければ地方がだめになる

 ――地方が大変だというお話がありましたが、地方経済を支えている一つに農業があると思いますが、いまの農業についてどうお考えですか。

 「満足に自給できているのは米だけですね。消費者には安全な食物を口に入れたいという思いがありますね。私はいま単身赴任ですので、スーパーに行くと産地はどこかと表示をみて、国産なら少し高くても安全だと思って買っています。安全で安心できる食料を提供することが一番大切だと思います。そのためには、手間もコストもかかると思いますから、いままでのように家族だけで農業をするのではなく、農協さんなどが中心になって規模を大きくして低コストで安全なものを作るようにしていかないと外国産との競争に勝てないのではないでしょうか。
 大規模化することで、安全なものを確実に提供できるようになるのではないかと思います」

 ――農業で元気がでないと地方経済はダメですよね。

 「私どもは、農業や漁業関係の人たちにシャッターをたくさん使っていただいています。後継者がいなくて古くなった納屋のシャッターをなかなか取り替えていただけないということもありますから、農家の人たちが元気になってもらわないと本当に困りますね」

 ――防犯のためにはシャッターが一番ですね。

 「米泥棒などの記事がよく出ていますが、倉庫や納屋にシャッターを取り付けてシッカリ閉めていただくのが一番の防犯対策だと思いますね」

 ――信条とされているのは…

 「努力あるのみだと考えています。事業会社になるととかく結果だけが求められますが、結果がすべてではなく、そのプロセスや努力も評価しなければいけないと思います。「また重要なのは“結果の平等ではなく、チャンスの平等”です。誰にもチャンスはあるので、そのチャンスを活かして努力するかどうかです。さらに例えば、あるものごとをやる時に計画を立て(P)それを実行し(D)そのできばえを検証し(C)次に生かす(A)というPDCA努力をいかにやったか、そのレベルを上げたかを評価したいです」

 ――今日はお忙しいなかありがとうございました。


インタビューを終えて  
 中屋社長は石川県の手取川を挟んだ半農・半漁・半商業の町のご出身。昭和44年、発出勤したのは東京都板橋区高島平の当時東京工場の横に立つ本社ビルの経理課。今その隣の三和シヤッター本社ビルでインタビューした。入社から38年後の今年10月1日に社長に昇進した。シャッターは順調に伸びて事業は多角化、海外生産やリフォーム事業にまで拡大、従業員2700余人の生活を預かる。座右の銘は切磋琢磨すること、結果は全てではないが努力あるのみ。チャンスは平等に与えるのが社の方針という。
 中屋社長の趣味は、小学生から始めた切手の収集を現在も継続中。戦後発売された日本切手はほとんど手元にある。記念切手などは発売当日に購入する。何枚集めたかは数えたことがない。青森県生まれの奥様と決めたのは茨城県つくば市のマイホーム。つくばエクスプレスでも通勤には2時間超かかる。安心・安全・快適は会社のモットー、国産農産物と同じだから野菜なども産地を確認して買う。
 アグリビジネスとしては、農家の納屋、車庫、米・肥料倉庫などシャッター取り替え需要の期待がある。(坂田)

(200711.7)

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