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 全農バース株式会社
 佐藤侑夫代表取締役社長

  インタビュアー:坂田正通(農政ジャーナリストの会会員)

全農バース株式会社は昨年、創立30周年を迎え、この4月に品質管理システムと環境マネジメントの国際規格「ISO9002」「ISO14001」を取得。佐藤侑夫社長は今後の事業展開に意欲を燃やしている。


(さとう えきお)昭和16年3月栃木県生まれ。宇都宮大学農業経済学部卒。昭和38年全購連入会、52年総合企画部ニューヨーク事務所、60年札幌支所肥料農薬部長、平成2年肥料農薬部農薬原体課長、6年施設資材部長、9年全農バース(株)専務取締役、11年代表取締役社長就任。

■ISOの認証取得、おめでとうございます。まず取得までの経過を。

 佐藤 当社は昨年、創立30周年を迎えました。設立の趣旨は、全農で取り扱う輸入肥料原料を岸壁や倉庫でお預かりし、一部は加工もしてメーカーや農家にお届けするということでした。
 しかし、この30年の間に減反の強化や輸入農産物の増加など環境が大きく変化し肥料の需要も徐々に減退をしてきたこともふまえ、最近は、製紙のコーティング原料であるカオリンや肥料メーカーのSP(ストック・ポイント)品、農薬などの取り扱いも拡大してきました。そうしたこともあって昨年度の収益は初めて70億円を超えました。
 ただ、今後は従来どおりの仕事のやり方では情勢の変化に追いついていけないという危機感もあって、30歳を契機に、1昨年の8月にISO認証取得を検討し始め、昨年3月末に取り組みをスタートさせたんです。ですから、おかげさまでちょうど1年で認証を取得できたことになります。

■社員のみなさんも相当苦労されたと思いますが。

 佐藤 認証を取得するには、ISOが求める基準で仕事のシステムなどをつくらなければならないわけですが、そのほとんどは、今までやっている内部での業務管理をきちっと文書化することなんです。
 それも、基本となる“マニュアル”、それを展開するための“規定”、実際に作業をするうえでの手順を記した“指示書”と3段階で文書を整理しなければなりません。
 しかも、品質ISOについては、本社と新潟支店、広島支店で取り組んだわけですが、一字一句についても共通の認識を持たなくてはいけませんから、度重なる会合も必要でしたね。日常の業務を抱えながらのことでしたから、かなりハードだったと思います。


環境側面に配慮した対策を整備―――

■広島支店は環境ISOも取得しました。一つの会社で同時に取得するのはJAグループでは初めてのことですね。肥料原料の荷揚げ、保管を行う現場ですからやはり環境に配慮しようということですか。

 佐藤 広島支店の施設は当社所有のプライベートな岸壁なんです。しかも周囲には民家が迫っていることもありまして、他に先駆けて取得を急ぎました。
 私どもは燐鉱石や加里、カオリンなどバラ物を扱っていますから、船からの荷下ろしのときにどうしても粉塵が出やすいわけです。そういう環境側面に配慮して粉塵の軽減対策のほか、設備内にこぼれた物資が雨水などで海水に流れ水質を汚染しないようにする排水対策、それから作業所から出るパレットや古い袋など廃棄物の処理システムなどを整備しました。
 環境ISOの趣旨は、環境に対する負荷の軽減がもっとも大きなテーマで、継続的に限りなくゼロに近づけていこうということなんです。今は、荷造り、包装作業所での粉塵対策、騒音対策も検討しています。

■ISOの取得は、今後の業務にどう影響するとお考えですか。

 佐藤 私どもは、ビジネスを行ううえでのパスポートを得たと理解しています。これから新規事業なり業容の拡大を図るうえで大いに活用していこうと思っています。

■社内にも好影響でしょうね。

 佐藤 業務が均質化されるといういわば金太郎飴的な面がありますが、それは顧客からの信頼にもつながります。同時に、自分たちで決めたルールでもあるわけですから、みんなが気持ちをひとつするという意識改革の点でも大きな影響があったと思います。
 取り組みの過程では、正直に言って、こんなことまで必要なのか、という気持ちもあったと思います。ですが、それを乗り越えた。ISOの取得は一つの道具に過ぎませんが、社員一人ひとりの意識は一段も二段もグレードアップしたと思います。


地球規模で多面的機能の需要性を認めさせる運動を―――

■ところで、日本は自給率を45%に高めようという目標を掲げましたが、肥料などの物流現場から見てどんな考えをお持ちですか。

 佐藤 私どもはJAグループの一員として、軸足を肥料に置いて仕事をしているわけですが、日本農業にしっかりしてもらうことは当社のためというよりも日本のためだと思っています。
 ですから、カロリーベースで40%そこそこの自給率は非常に憂うべき現状で、昨年、新しい基本法ができて、自給率の向上と農業の多面的機能について国民的なコンセンサスを得ようじゃないかということになったわけですよね。


国内農業生産の維持拡大は国益を確保することに―――

  佐藤 私は、このことを国内だけじゃなくて、昨年のWTOシアトル閣僚会議のようにEU諸国や発展途上国の国々と力を合わせて、地球規模で多面的機能の重要性を認めさせていく運動をおおいにやるべきだと思うんです。そうしないと農業者も組織も元気がでないし、アメリカやカナダなど大規模な農業国から、農産物を買いなさいを押し切られてしまう。いうならば日本農業をどう押し戻していくか、まさしく国益をどうやって確保するかという取り組みがまずは大事だと思います。
 その上に立って、国内の農業生産を維持拡大するということになると思いますが、やはり消費者あっての生産ですからニーズを常に把握していく必要があるでしょう。ただし、アンケートをとると、消費者にとって価格は必ずしも優先順位のトップじゃないんですよね。新鮮さや安全度のほうが優先されていますから、それを実践していくことが大事じゃないでしょうか。
 私どももほんの一部分を担っているだけですが、今、全農が展開しているコスト低減運動に貢献できるように輸送経費の削減などさらなるコスト削減につとめていきたいと考えています。

■最近はご自分でも野菜作りを?
 佐藤 農地を90坪ほど借りて、今はね、キヌサヤ、ツルナシインゲン、それからナスを30本、トウモロコシ70本もこの間移植しましたし、スイカにメロン、トマトにピーマン、そのうちにさつまいもも植えてやろうと思っています。自給自足できますよ(笑)。
 毎日、観察することが大事ですね。私も農家の生まれなものですから性に合っているようで、帰ってもサーチライト持って見回っていますし、今朝も五時前に水やりしてきました。プロの農家の方の苦労が分かるような気もします。

■もう一つの趣味のゴルフについてワンポイントレッスンを(笑)
 佐藤 いやいや(笑)。まあ、気心の知れた人たちと楽しく歩くという考えでいいんじゃないですか。ゴルフは、技術を競うものじゃなくて自分との闘いであり、周りの競技者のことを考えるものだと思います。それも自分より後に来る人たちのことを思いやることですね。バンカーでも少なくとも自分で作った足跡はならしておく。それができれば一流のゴルファーですよ。

■今日はどうもありがとうございました。



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