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検証・時の話題
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新基本計画の問題点 施策の集中化で構造改革は進むか 高武 孝充 JA福岡中央会 水田農業対策部長 |
新たな基本計画のもとで策定される見込みの品目横断的経営安定政策は、わが国の農政転換の象徴となる政策だ。ただ、農水省はこの施策の対象農家を一定の要件で絞り込む方針を示している。絞り込むことによって農業構造の改革が進むというが果たしてそれは本当か。対象から外れた農家は大規模経営などに貸し付けた農地を返してもらい自由にコメの作付けをするのではないか、との懸念も出ている。そうなれば担い手も面積要件を満たさず「担い手」にならなくなる恐れもある―。 JA福岡中央会水田農業対策部の高武部長に、検討されている品目横断政策での助成水準の試算値とあわせ、担い手を絞り込むことの問題点を指摘してもらった。 |
しかし、認定農業者を基本とした個別経営体、経営主体としての実体を有する一定の集落営農を対象に集中的・重点的に施策を実施する方針、言い換えれば、要件を満たす担い手=品目横断経営対策の対象者という基本姿勢はかわらないだろう。生産現場では、「品目横断的経営安定対策とは何ぞや」という声も多い。 そこで本稿では、品目横断経営対策、とりわけ諸外国との生産条件格差是正対策について、批判を覚悟の上でかつ粗っぽい前提条件を付して、どれくらいの水準になるのかを試算する。その上で、果たして認定農業者を基本とした担い手への集中的・重点的施策のみで構造改革は進んでいくのかを考えてみたい。 ◆ハードル高い担い手の規模要件 まず、担い手について、農水省は当初「プロ農業者」という表現をしており、その要件として、(1)経営面積要件は担い手経営安定対策の要件(個別経営体4ヘクタール以上、集落型経営体20ヘクタール以上)よりもさらにハードルを高くする、(2)コスト削減目標30%以上、を示唆し、企画部会に示した考え方は、平成19年度からの導入を前提としたうえで、他産業並みの所得水準(年間530万円)を確保し得る経営規模として「個別経営で10ヘクタール(1年2作)、集落営農で40ヘクタール(2年3作)」を下限とする平成27年度目標を示した。この目標にむかって段階的な要件を設定することになるだろう。 ◆生産条件格差はどう是正されるか 品目横断経営対策とは、毎年の作付面積は原則自由であることを前提として、「諸外国との生産条件格差是正対策」(ゲタ部分)と「収入・所得変動緩和対策」(ナラシ部分)との二本柱とされている。このうち、関心が高いのは「諸外国との生産条件格差是正対策」がいったいどれ位の水準になるのかということであろう。 ○関税キロ280円 水準でコメも対象に コメは、1キロあたりの2次関税341円は輸入禁止的な高関税であるからゲタの部分は交付されていない。当面、この措置は適用されないということであろう。(農水省資料では「空振り」という表現) ○コメの補てん水準試算 10アール4万6000円 生産費には変化がないという前提で、コメの2次税率1キロ200円として試算すると、1万7915円―(540円+200円×60キロ)=5375円(60キロあたり)。10アールあたり生産量518キロ(01―03年平均)として、約4万6400円となる水準である。 ◆小麦の是正水準10アール4万3000円 全国の60キロあたり小麦全算入生産費は、8787円(01―03年平均)である。 ◆大豆の是正水準 現行交付金を上回る? 全国の60キロあたり大豆全算入生産費は、2万644円(01―03年平均)である。諸外国の生産費として小麦と同じようにアメリカの数値を使用する。 ◆集落型経営体25ヘクタールではどれくらいの補てん金になるか? さて、07年度導入の品目横断経営対策の対象となる担い手の経営面積規模要件は、個別経営体では6ヘクタール、集落型経営体では25ヘクタールが予想される。 ◆小規模農家の排除で「担い手」が脱落する!? 米改革の担い手経営安定対策の対象者(経営規模要件4ヘクタール以上)は、北海道を除く都府県で4万3264戸(2000年センサス)である。福岡県では601戸で販売農家6万977戸のわずか1%に過ぎない。また、土地利用型農業の生産組織数は637組織存在するが、20ヘクタール以上の経営面積をもつ組織数は240組織である。「担い手づくり」を促進する仕組みの確立は必要である。集落ビジョン運動は、米改革後に用意されているこうした視点をふまえて、担い手づくりに性根を据えて取り組まねばならない。残された時間は多くない。しかし、「担い手か、非担い手かによってオール・オア・ナッシングでいいのか」。それ以上に重要なことは農水省が考えている経営規模要件などに応じた「プロ農業経営」を目標に、要件を満たさない「準プロ農業経営」も施策の対象とするなど段階的施策を講じる等の柔軟な対応が必要である。例えば、「プロ農業経営」を助成水準100とするなら、「準プロ農業経営」は90とし、100に近づくようなインセンティブを与えるような階層に応じた対策を講じないと構造改革は進まないだろう。下限を設定してこれに達しない農業者は知らないというのでは、今は小規模であってもこれから規模拡大をしていこうという農業者の意欲と活力を奪うことにもなる。そうであってはいけない。また、大規模経営者といってもほとんどが借地によるものである。最も恐れるのは経営対策の対象外となった地権者が農地の貸付けをやめて無秩序に米生産に走ることである。 (注1)中国・黒龍江省新華農場の職工農家の稲作生産費については、米価格変動の影響で62〜69%あるいは70%台とした報告書もある。(福岡県稲作経営者協議会編「中国黒龍江省のコメ輸出戦略」・村田武編「再編下の家族農業経営と農協」)農業課税の軽減措置が導入される予定なので60%とした。 (2005.1.31)
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