◆北海道の作柄が良好
調査は9月26日から30日にかけてJAの米事業担当者に電話取材したもの。各地域とも主要産地を中心に選定、202JAの平年生産量の合計は約412万トンで17年産生産目標数量851万トンの48%を占める。
担当者にはJA管内の作況指数の推定値、調査時点での全品種平均の1等米比率を回答してもらった。1等米比率はまだ検査が始まったばかりのところが多く今後の結果によって変わる。
農水省の調査で作況指数109となった北海道は本紙調査でも全国でもっとも高い107となった。「とくに病害虫の被害ない」との声も多く1等米比率も高いとの回答が寄せられたが、「公表された作況は良すぎるのではないか」との指摘もあった。
東北6県は100〜102。JAによっては10月の作況指数を102と想定し管内の過剰米数量をはじき出して対策準備を進めていると話すところもあった。
関東・東山では茨城が104、群馬103、栃木102、長野102の一方で埼玉が99と推計された。埼玉からは地域によっては長雨の影響と害虫の発生による被害の声が寄せられた。
また、北関東で作柄が良好だとした地域でも昨年の作況指数(105〜107)にくらべれば低く「5月の低温が影響」、「思っていたほど作況はよくなかった」(栃木)という指摘もあった。また、千葉県の沿岸部では台風で被害を受けている地域もある。
北陸では富山、石川、福井の3県はほぼ昨年と同じ作柄という結果だ。ただ、カメムシの被害を指摘する声が多い。
一方、新潟は昨年のような台風被害はなかったとの指摘が多かったが、「5月の日照不足、低温の影響」、「長雨での倒伏」などの被害もあり本紙調査では平年並みの99との推計となった。
東海では三重県で開花時の台風被害とその後の高温障害が報告された地域があり平年並みだが99となった。近畿では平年並みの推計値の地域と102を超える地域もあった。
◆九州では昨年に続き不作の県も
中国で鳥取が台風、降雨の影響で登熟不良などで昨年よりは高いものの97との結果となっている。また、中山間地域でのカメムシ被害も指摘された。
四国では、愛媛が本紙調査では99の平年並みと推計されたが、他の3県はいずれも集荷円滑化対策の発動基準となる101以上の結果。早期米の作柄がすでに良好と確定している徳島、高知では「過剰米対策が課題」との声が多かった。
一方、九州からは厳しい実態を指摘する声が相次いだ。福岡のJA担当者らは「102などとんでもない数字」、「農水省の数字と現場はかけ離れている」と話す。理由は台風被害とウンカの発生だという。本紙推計で100を超えたのは長崎だけで熊本は95、大分は91という推計値となった。農水省の統計では昨年の熊本の確定作況は77、大分は86。一昨年(15年産)も九州7県はどこも100を超えておらずこのまま推移すれば県によっては3年連続の不作となる可能性もある。
今年は全国的に台風被害は少なかったが宮崎からは「台風14号で1000ヘクタールが冠水。50ヘクタールが収穫できないかも。飯米もとれない地域もある」との声が寄せられた。
全国作況では本紙推計も101となったが地域によっては今年も自然災害に苦しんでいるところもあることは忘れてはならないだろう。
◆過剰米の区分出荷は需給バランスに不可欠
ただ、今年はこのまま推移すれば豊作による過剰米として処理する集荷円滑化対策が発動される県が見込まれる情勢にある。
農水省は9月15日現在の全国平均反収を536kgと予想している。さらに17年産の主食用水稲作付け面積を170万ヘクタールと見込み、生産量を911万トンとした。このうち加工用を13万トンとして主食用はこのまま推移すれば898万トンになるとする。
一方、今年7月から来年6月末までの需要量は農水省の基本指針では853万トン。差し引き45万トンの過剰となる。
ただし、作況102とした場合の豊作による過剰は予想反収から15万トンとみる。残り30万トンは、昨年より38万トン少ない175万トン水準となっている民間在庫(今年6月末)と実質20〜30万トンの年内政府買い入れで吸収できると説明している。政府備蓄米は現在84万トンでそのうち16年産は37万トン。そのほかは9年産から11年産で「政府備蓄米の買い入れ局面にある」(農水省総合食料局)。
したがって、豊作による過剰分、15万トンが適正にJAで管理され区分出荷されれば需給はバランスがとれると説明している。
豊作による過剰米対策の発動要件は10月15日現在で全国作況が「101以上」で都道府県、地域(作柄表示地帯)でも101以上となれば発動となる。
今回の調査では「米価がさらに下がるのではないか」、「生産者手取りを上げる販売努力しなければならない」といった声も聞かれた。そのためにも需給と価格をさせるよう地域によっては集荷円滑化対策の発動をふまえた取り組みが求められている。
◆JA米事業担当者の活躍に期待
昨年は改正食糧法の施行など米政策改革元年の年。そこに史上最高の台風上陸数という異変となり、秋口まではおおむね良好と伝えられていた米の作柄がかなり厳しくなったとの公表を受け、本紙はJAの米事業担当者への緊急調査を行ったのがこの企画のスタートとなった。それは公表数値は現場の実感と質も量も違うとの指摘を多く受けたからである。
今年は昨年と異なりおおむね作柄は良好との推計結果が出たが、すでに指摘したように一部地域では自然災害で厳しい実態にあるようだ。今回も量はもちろん1等米比率など質に関わる点についても率直に実状を話していただいた。
また、作柄に関わらず今後のJAの米販売にどんな道を拓こうとしているのか、19年産からは「農業者・農業団体が主役」の米需給システムへの移行が見込まれるなかで、多くのJA担当者が課題として意見を寄せてくれた(後日掲載)。いずれも現在の米価では生産者の期待に応えられない、というものでJA直売などを模索するというものだった。地域の今年の作柄と同時に、この先を見据えればJAとしての販売戦略が課題となると捉えていることがひしひしと感じられた。
なお、全国と都道府県の作況推計は、各JAの管内生産量をベースに加重平均して求めている。
今回の調査にご協力いただいたJAの担当者に感謝します。(つづく) |