実需者との連携強化への認識も深まる
◆「JA米」西日本でも5割超
「JA米」への取り組み状況などを調査する本紙アンケートは今回で4回め。調査は昨年3月に行った。
都道府県ごとに米生産量の多いJAを基準に選定し、07年度調査では577JAを対象とし513JAから回答を得た(06年調査では508JAが回答)。
JA管内の米生産量(18年産)について回答のあった455JAを合計すると623万トンとなった。調査時点の19年産の作付け面積予定計は回答476JAで129万8000haとなった。
18年産の集荷率は回答のあった479JAベースでは全国で47.7%。東日本では54.4%、西日本では40.6%だった(表1)。全国ベースの集荷率は06年調査(17年産の集荷率)より0.6ポイント低下した。
ブロック別では北海道がもっとも高く76.3%で、もっとも低いのが四国の32.6%だった。北海道は06年調査でももっとも高く85.3%という結果だった。
18年産での「JA米」の取り組み状況は全国ベースで前回調査より約6ポイントアップの77.3%となった(表2)。前回調査で「18年産でJA米に取り組む予定がある」としたのは77.4%だったことを考えると、この結果からは着実に予定どおりの取り組み実績を上げていることが分かる。
◆19年産「JA米」集荷量の6割
地域別にみると東日本では87.9%と前回よりもさらに5ポイントほど増えた。また、これまでの調査では「JA米」の取り組みには東西格差が示されていたが、今回、西日本は57%と前回実績よりも約8ポイント増えて調査開始以来、はじめて5割を超えた。前回調査での「18年産での取り組み予定」と今回調査の実績の比較でも「近畿」は「予定」59.4%、「実績」60%、「中国」は同62.5%、同61.3%、「四国」は同27.3%、同36.4%となっており、西日本でも着実に取り組みが進んでいることが伺える。
一方、昨年3月の調査時点での19年産での「JA米」への取り組み予定は、全国ベースで82.1%と8割を超えた。東日本では88.8%と高率で西日本でも68.7%と7割に迫る結果となった(表3)。
ブロック別では「四国」でも52.4%と前回より伸びて、この結果、全ブロックで取り組み予定は5割を超えた。これも調査開始からはじめての結果となった。
一方、JA米に「取り組む予定はない」とした回答は全国ベースで17年産22.4%、18年産13.9%、19年産11.5%と漸減している。
こうした実績のもと、18年産の「JA米」生産量は回答369JA計で297万トンとなった。集荷量に占める割合は全国ベースで53%。ブロック別では「東北」77.4%、「北陸」67.7%で、「九州」37.6%、「四国」15%だった(表4)。
また、調査時点での19年産での「JA米」への取り組み予定から推計された生産量は回答379JAで352万トンとなった。集荷量に占める割合は全国ベースで60%となり、東北や北陸では80%を占めると見込んでいる(表5)。
◆「連合会との連携強化」も課題
本アンケートでは販売を起点とした米事業への取り組み状況を聞いており、そのために「生産者への需要情報の伝達」をどの程度行っているかを調査してきた。
この点について、これまでの調査と合わせてその推移をみると、全国ベースで17年産51.8%、18年産57.7%(図1)、19年産63.2%(図2)と着実な伸びを示しており、JAが生産者に重要情報を伝える取り組みが浸透していることが伺える。19年産での取り組みを地域別にみると、東日本67%、西日本55.9%だった。また、ブロック別では北陸81.1%、北海道、甲信越80%などと取り組みに積極的な地域もみられる。
伝達する需要情報の内容についても調査しているが、「価格動向」と「県全体の需要情報」が上位を占めている(図3)。そのほか「JA管内の需要情報」、「JAの米販売先の評価」などと続くが、回答の順位は前回と比べて変化はない。ブロック別には「北海道」で「用途別需要情報」、「近畿」で「JA管内の需要情報」、「北陸」で「価格動向」などが他項目よりも回答率が高くなっている傾向が見られた。
一方、「販売計画の策定」についても全国ベースでの推移は17年産83.1%、18年産87.1%、19年産91.5%と年々伸びを示しており、同計画の策定の重要性の認識が一層深まっていることが分かる(図4)。19年産ではブロック別にみても総じて高く最低が「四国」の77.3%だった。
その販売計画の内容で重視している項目については、「生産履歴記帳の実施」27.5%、「JA米の生産・販売」21.4%が上位を占めた。また、「連合会との連携強化」は14.2%だった(図5)。
「JA米」の取り組みの推進方法は「集落座談会での説明」と「パンフレット」などの方法が上位を占め、この点についても前回と変化はなかった。
また、「生産基準の策定と配布」については、全国ベースで82.8%。東日本、西日本とも8割を超えてこの取り組みはかなり浸透していることが伺える(図6)。
◆独自の栽培基準づくりへの取り組みも
「JA米」の3要件に追加の要件をJA独自に設定しているかどうかについては、29.5%と約3割のJAが回答した(図7)。前回調査では27%だった。この取り組みには地域差がみられ「関東」56%、「九州」31%がなどが高くなっている。
追加する要件は、前回調査では「品種の指定」が29.1%でトップだったが、今回の調査では「網目」の設定が30.4%ともっとも多かった(図8)。
また、「JA米」とは別にJA独自で栽培基準を設けているかどうかについては全国ベースで7割近い回答数があった(図9)。その内容については「都道府県の認証基準による栽培」がもっとも多く32.7%で、ついで「JA独自の栽培基準」が26.2%だった(図10)。JA独自の栽培基準については自由回答欄に記入してもらいその一部をここで紹介した。
回答には地域特性を生かした生産方法や生産資材の統一化などの取り組みが見られるほか、実需者との協議によって独自の栽培基準を決める重要性を指摘する声もあった。
また、今後の米事業については、学校給食への供給など確実に需要のあるところへの地産地消型の販売や、そのための品種、栽培法の見直し、また、産地全体として業務用途へのシフト、実需者との播種前契約の必要性を上げる意見も目立っているほか、価格安定のための集荷率向上と米価下落対策の充実などを上げる声が年々増えていることも感じられた。
「JA米」に取り組む生産現場からの声(アンケート 自由回答から)
◆JA独自の栽培基準の例
○実需より産地指定を受けている分に対して実需の要望する栽培基準を基にJA、普及センター等と協議し、JA独自の栽培基準を設定した。
○JAオリジナル有機肥料と土づくり肥料を使用した米。1.95mmで選別した「大粒こまち」。地域を限定した「あきたこまち」(高食味、高品質米)。
○食味向上のため独自肥料を秋に稲わらとすきこみする「秋仕込み米」がある。
○特別栽培米とは別に地域指定で生活排水の混入のない米。
○アイガモ農法による完全無農薬米。温湯消毒有機質堆肥100%。
○エコファーマー(県認証)取得した生産者による慣行より2割減の栽培米で肥料・農薬を限定している。
○有機100%肥料による「米の清」こだわり米の生産。
○実需の要望を勘案しバラ出荷率100%を目標とすることで均質で安定的な供給を確保したい。生産者にとっても紙袋詰めなどの労力軽減ともなり消費者の「安全、安心」ニーズに応えることになる。課題は大規模調整施設の利用促進。
○食味計による平均点をクリアした米。
○はざかけ米。JA米の栽培基準を満たし天日乾燥を実施。
○「安全・安心」を目標に平成20年度より種子消毒を、温湯消毒方法に変更する。
○海藻アルギット肥料使用米(減化学肥料。減農薬)。
○5つの共同乾燥調製施設ごとに栽培指針を作成し、生産者との間に協定を締結している。栽培指針内容(品種、基肥、中間追肥、除草剤(本田・畦畔)、基幹防除)。
○食味の例による分別した栽培基準、肥料農薬当地比50%以下(化学合成)。
○「飲める水」で作る特栽米。
○地域ブランド米(特別栽培米)について県が進めるエコ山口農産物認証制度で推進。
○食味値75点以上。認定を受けている地域米。品質安定のための共同乾燥施設利用。
○特別栽培米(県エコ基準クリア、使用農薬限定)、ステビア栽培米・ミネラル栽培米。
○天然にがりを耕起前、田植後と、3度散布する。
○ミネラル塩散布、米ぬか散布等。
○JA有機センター堆肥施用ほ場=堆肥米、減農薬米→棚田地区を中心に減農薬栽培した米=棚田米、架干米=架干し乾燥。
◆「売れる米」づくりの課題
○食の安心、安全への取組強化。地産地消への取組強化。系統集荷率の向上。
○地産地消による非生産地への販売、特にこだわりの高品質米の販売で評価を高めるなど。
○安く売れる米づくりではなく高く売れる米づくり。
○産地指定率の向上(品質・価格)。安全安心対策(コンタミの回避)。地産地消の拡大。
○農薬の適正使用に基づく栽培履歴記帳の実施、開示。JAとして統一のとれた生産体制を作り、特徴のある生産体制を作る。
○あきたこまちの作付比率が高いため今後業務用向け品種めんこいな、ひとめぼれの作付拡大を集落営農に作付指導を図っていき中食、外食産業へ販売予定。
○契約の12%程度を買取米として販売することでJAの手数料の確保を進める(平成19年度米より手数料の定額化を実施する)。
○通常一般米のほかに、低価格米の栽培にも目を向け取組む必要がある。
○特栽米・エコ米を中心に環境に配慮した米づくりをPR。
○物流コストの削減。
○当JAは慣行栽培であるが、生産者の手間を消費者に伝えたい。
○価格の下落に歯止めがない。底が見えないと対策もとりにくい。
○低価格米へのニーズがふえてきているが生産者サイドから思えば栽培意欲を失わせるような状況で米の価格が安い分、収量を最低限維持できるような栽培指導が求められる。
○売り切っているが価格が低く農家経営は厳しい。
○政府米の買い入れと販売の整合性。安売りの原因をつくっている。
○人口減少の中、明確な販路拡大、確保のためには安定的な生産基盤が重要である。集落営農を含めた担い手確保が重要。またその担い手の米をどこにどのように販売していくのかを明確な指針として示すことができるかどうか。
○複数年にわたって確実に需要が見込める引取先との連携が必要。
○特別栽培米の区分を整理し、18パターンから7パターンに集約、ロットの拡大を図った。今後、販売環境の整備が必要。
○特別栽培米の作付け拡大と自然乾燥米の維持による有利販売。
○価格の二極化が一層進み、しかも低価格化への移行割合が極端に大きい。
○生産管理、保管管理コスト及びリスクの増。タイムロス。(ポジティブリスト対応、紙袋の汚損破損、倉庫のデッドスペース)。流通コストは遠距離が不利。
○総じて環境保全米の推進を進め販売先(契約先)要請に応えられる米づくり。
○環境保全型稲作(減化学肥料・減農薬)の拡大を図ることと低コストに努めて安全安心な米を作ること。また業務用等の低価格米の販路の拡大を図り家庭用米の価格の安定を図る。
○農地、水、環境保全向上対策を管内全地区で実施、営農活動支援への対応で特別栽培米の面積拡大をはかる。
○生産過剰で販売価格の低迷が懸念される。
○今後は「うまい米づくり」だけではなく、安価でも「買ってもらえる米づくり」を販売の基点にしていきたい。
○管内でRC、CEを中心としてJA米コシヒカリを全量フレコンで出荷したい。
○JAは生産調整に主体的に取り組んでいるが、生産調整に参加せず、独自で個々の生産者より集荷する業者対策。
○買い取り米の実施。
○高品質米を求める消費者・需要者もいる一方、低価格を求める消費者・需要者も。誰にどのような米をどの位の価格でとれ位を販売するか、それに向かってどのような生産方法、流通経路をとって行くかを明確にし具体化できる産地づくりをしていくかが課題。
○品質向上対策(1等米作り95%以上目標)。銘柄誘導対策(コシヒカリ以外の銘柄米作付25%以上)。実需者、消費者、生産者の交流情報交換の場づくり(顔のみえる産地づくり)。
○多種多様な米づくりが必要(用途別の生産)。
○業務用を主体とした販売。また特色ある栽培の拡大と販路拡大。
○トレーサビリティーシステムの維持、その上で土づくりを進め安全安心均一な米づくり。現状取引している卸業者からのつながりで多くの業者に知ってもらえるように販売外交の強化。
○地産地消の観点での学校給食等需要のある品種作付への転換。
○契約販売を考慮に入れた安定的供給(数量・価格)が出来る卸等の販売先を検討、選定。
○全面全農販売。
○インターネットの利用。
○量販流通米、JAブランド米、地域ブランド米の3種類の取り組みを行い販路の拡大と有利販売に努める。
○安全安心に向けたニーズはますます高くなっているが、売れる米づくりは産地主導・産地独自のこだわり米ではなく実需者とのタイアップによる企画がより需重であると考える。
○生産面では3カ年続きで台風と高温障害で大幅減収。倒伏に強い品種誘導等、台風対策が必要。
○播種前契約も視野に出来秋以前に大口需要先との安定的取引契約を積み上げることが「売れる米作り」につながる中、価格形成のあり方が問われる。
○売れるのではなく、買ってもらえる米としての「安心・安全・環境にやさしい」米づくりであるのではないか。
○全量集荷に努め、RCで品質区分及び色彩選別導入により、品質向上を図り、売れる米づくりに努めたい。
○田植時期を遅らせ良質米の生産に努力しているが、台風が毎年来て苦慮。
○管内圃場にタンパク分析を実施し、低タンパク米に取り組む(タンパク水田マップ作成中)。(販売)市場、実需者のニーズに応じた安心安全の供給体制。
◆「JA米」への要望
○モチ米も「JA米」として扱ってほしい
○生産者の納得を得る価格を含めた販売ルートの確立。
○消費者まで認知されていないので推進方法の検討が必要。
○種子更新が大規模農家ほど良くない傾向。更新率拡大が課題。
○JAが集荷した米は安心だという声もあるので今後も推進していきたい。
○一般米に比べ価格差があるもののJA米の有利販売、また「安心、安全」をもっとアピールしていく必要があると思う。(生産者、消費者にも)。 |