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検証・時の話題
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「協同組合らしさ」を競争の軸に ヨーロッパ生協の全国・地域連帯に学ぶ 田代洋一 横浜国立大学教授 |
巨大スーパーマーケットなどの進出に対して協同組合はどう対抗すればいいのか。生協では事業を広域で展開する事業連合の機能強化や、さらには全国規模での商品開発や共同仕入れをめざしている。こうした事業方式をすでに実現しているのがヨーロッパだ。横浜国立大学の田代教授に現地の動きとJAグループが学ぶべき点について寄稿してもらった。 |
◆スモール・イズ・ビューティフル?
日本の生協は県域を越えて展開できないため、全国展開できるスーパーマーケット(以下SMとする)チェーンに対して、県域を越えたリージョナルな事業連合を作って対抗してきた。そして今日、ウォルマートやカルフールなどの多国籍企業の日本上陸に対して、広域事業連合の強化、それと日生協とのタイアップによる全国的な商品の開発・仕入をめざしている。その背中を押したのは、「競合が進出する前に先手を打たないと負けですよ」というヨーロッパ生協のアドバイスだ。そこでの教訓は、戦略意思の統一に基づく、全国共同仕入や広域事業連合化である。 ◆イギリスの全国共同仕入 イギリスは協同組合発祥の地だが、1960年代以降はシェアの凋落をみてきた(現在の食品市場シェアは6%)。卸売連合会であると同時に小売も行うCWSが、最大の小売生協であるCRSとの合併を追求してきたが、なかなか果たせないなかで1997年には若手実業家によるCWSの乗っ取り騒ぎも起った。それを乗り切ったCWSは、財政破綻したCRSとの合併を2000年にようやく果たし、CG(コーペラティブ・グループ)と改称した。イギリスは今日では、このCGが全生協事業高の5割以上、その他9大生協と併せれば9割以上を占めている。 ◆強い価格交渉力で仕入れ価格を改善 それに対して単協は、プロモーション以外の売価決定、店舗開発、店舗運営を担う。出閉店、店舗レイアウト、展示場所は単協が決めるが、CRTGにパネルを設置し、デザイン、カラー等を検討しており、単協はそれを大いに参考にしている。メーカーへの発注、代金支払いは単協が直接に行い、リベートはCRTGにプールされたうえで単協に配分される。 ◆イタリアの全国共同仕入・事業連合
その後80年代に生協陣営はハイパーマーケット(HM、ほぼ6000平方メートル以上)業態の導入にいち早く取り組んで同業態でトップにたち、今日もSM、HM含めて食品全国シェアは18%で、2位のカルフール10%を引き離している。また生協陣営は果敢に合併を押し進め、現在は9大生協が事業、組合員数の9割を占めている。 コープイタリアは、コープ商品(PB)の開発、品揃え、仕入価格、セールスプロモーション等に責任をもつ。商品を、(1)品質面でのリーダー商品(NB)、(2)市場リーダー商品(NB)、(3)COOP商品、(4)ローカル商品、(5)低価格本意の商品の5カテゴリーに分け、(4)を除く商品をコープイタリアが直接に仕入れる。(4)は単協が仕入れるがその最終決定権と品質等のチェック責任はコープイタリアがもつ。コープイタリアの経費は、単協が事業高の0.2%程度を支払うかたちで負担する。 このような形で全国統一仕入のメリットとローカル性重視の折り合いをつけたわけである。コープ商品はコープイタリアが開発するが、かならず全国500人規模の単協組合員のブラインド・テストを行ったうえで採用する。 単協は仕入量と売価を決める。出店(箱づくり)は単協が行い、コープイタリアはハードには一切タッチしないが、店の業態、フォーマット、レイアウト等についてはコープイタリアが単協理事長、専門家とともに研究している。 ◆広域事業連合もスタート
イタリアでもここ数年いよいよ低価格競争が強まるなかで、生協陣営は、全国3地域ごとに広域事業連合を立ち上げ、これまで単協が行っていたカテゴリー(4)の仕入れを統合して行うことにした。つまり地域性の追求をリージョナル規模にまとめたわけである。こうして2003年10月にアドリア海沿岸地域に広域事業連合が立ち上げられた。 ◆ヨーロッパと日本の比較 イギリス、イタリアに共通するのは、全国規模でクリティカル・マス(競争力を発揮しうる商品結集)を追求して統一仕入価格を実現し、品揃え、プロモーションも全国規模で行い、単協は仕入数量や売価を決め、メーカーへの債務を負い、店舗運営に徹するという、全国規模でのスケールメリットの追求と地域密着でやることとの分業関係の徹底である。ただしイギリスの仕入は一本だが、スローフードの国イタリアでは、地域性を重視し事業連合の仕入も加わるという違いがある。 ◆日本の農協は何を学ぶか 日本の生協がそこまでいくのは時間がかかるだろう。何がなんでも統一ということではなく、一致できるところからの統一が大切である。ヨーロッパにはなくて日本の生協だけにあるのは、商品開発への単協組合員の参加である。ヨーロッパはせいぜいモニター機能にとどまる。日本はこの「協同組合らしさ」の発揮を国際競争の軸に据えるべきである。 (2005.2.10)
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