◆減少する野菜生産、増加する業務・加工用需要
国内における野菜の作付面積は、平成6年の54万8000haから15年には46万2000haへと10年間で約20%減少した。また野菜の生産量も6年の1455万トンから15年には1286万トンへと約15%も減少した。
一方、野菜の消費をみると、食料費支出に占める外食や惣菜・調理食品など中食の支出割合を表す「食の外部化率」は44%(15年)で、ここ10年近く中食の割合が増えてきている。野菜の用途別にみた需要量は、農水省の「野菜の需給安定に関する経済分析」(13年、データは12年)によると、生鮮で家計消費されるのは43.2%と国内で消費される野菜の半分以下となっている。そして外食・中食の業務用が41.3%、加工原料用が14.6%で合わせて55.9%も占めている。
これを国内生産量の約8割を占める主要13品目別に見ると、家計消費が50%以上の品目は、ピーマン(60%)、ナス(58%)、キュウリ(56%)、ホウレンソウ(54%)、キャベツ(52%)の5品目で、トマトは41%、タマネギとダイコンは42%、ハクサイ、レタスは43%、ニンジン、ネギ、サトイモは44%となっている(12年のデータ)。
輸入野菜は増加傾向にあり、16年には238万トンに達し、野菜の自給率は8年に86%と90%を割り込んで以降低下傾向が続き、15年は82%となっている。しかし、量販店などの店頭をみると、最近は輸入野菜の姿は少なく、国産野菜がほとんだといえ、家庭で消費される野菜は国産が中心だといえるのではないか。そのため、輸入野菜の多くは、業務用・加工用に回っていると考えられている。仮に輸入野菜の全量が業務・加工用に使われたとしても、業務・加工用需要の13%程度であり、国産野菜は健闘しているともいえる。
しかし、国内産地が、確実に増え続ける業務・加工用需要に的確に対応できなければ、輸入野菜がこうした需要に応えさらに増えるのではないかと藤島教授は指摘する(http://www.jacom.or.jp/kaiset05/rons103s05042809.html)。
全農千葉県本部は現在、園芸事業の改革を進めているが、特許技術を使い県内産野菜を原料にして10〜14日間くらい日持ちするカット野菜や日持ちする惣菜など付加価値をつけた商品化ができる青果加工センターを設置した。それは「加工原料をつくるという意識を持ってもらうことと、契約取引の実践となる取り組みを進めたい」からだと同県本部の鶴岡益夫営農園芸事業部次長は話す。
◆進む販売の多元化、契約意識の徹底がポイント
需要構造の変化だけではなく、卸売市場法の改革が進む中で、市場を通さない直接販売や契約取引など販売ルートの多元化が進んできている。
それは「顔の見える販売や直販のようなルートを持たないと、大規模農家や担い手のニーズに対応できず、そうした人たちが系統に集まってこない傾向にある」からだと甲斐野次長は分析する。また、安藤部長は、生産者サイドの要求と販売先の要求が分かれてきており、その細分化された双方の要求をどう結びつけるかを考えると「販売ルートの多元化は必要になる」と指摘した。
また松田部長は「生産者には、特別栽培とかグループでの栽培、慣行とは違う栽培などいろいろな考えの人がいる。従来の数量を多くして市場占有率を高めて有利に販売しようという事業方式では活かされなかった人たちが、直販の開拓で呼び戻されたことは評価されるべき」だと語った。こうしたことは画一的な生産方法を進める生産部会のあり方についても検討する必要がでてきているということだろう。
販売の多元化には、JAや全農県本部・経済連が直接実需者に販売する直販だけではなく、市場の卸や仲卸そして実需者と契約して販売する契約取引もある。JA甘楽富岡のインショップやJAふくおか八女など生協と直接取引しているのが前者の代表例だが、愛知経済連や茨城県のJAなめがたのように、市場を通して量販店などと契約して販売しているケースもかなりある。
どちらのケースでも「市場出荷していれば販売事業」という従来の意識のままでは問題が起きる。契約をすることの意味について生産者にキチンと理解してもらって取り組まないと「契約販売するときの敵は外部ではなく内部だ」ということになってしまう。
◆商品力を高め、どういうマーケットを攻めるのか
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全農首都圏青果センター東京では施設や包装などを視察 |
JAグループの連携については、産地間競争をせずに安定的に販売したいという希望を語る産地は多い。しかし藤島教授が「ある商社から6県がリレー出荷すると頭が6つあるが、輸入するときには頭は1つで規格も品質も揃えたものを出すといわれた」と指摘したように、早くからいわれてきながら、品質や規格などを統一した産地主動のリレー出荷がなかなか実現しないのが現状だといえる。ある参加者が「それは全農が機能を発揮しなければ、産地や県本部間では難しい」というように、全国連の役割だといえる。
直販あるいは契約販売が成功しているところは、再生産価格を主張するのではなく販売先も生産者もお互いに利益がでるように模索していると岩城場長はセンターの経験から指摘した。そして、品質・量・サービスあるいはこだわりといった商品力があるかどうか。さらに、「どういうマーケットを攻めるのか」という目標をもつことだとも。
産地によって生産される品目も異なり、生産者の状況や規模、生産量も違うのだから「自分たちの身の丈にあったパートナーを選ぶことだ」と吉田部長は強調する。
セミナーでは販売の多元化とくに直販・契約取引を中心に熱心に討論がされたが「販売の多元化を進めるうえで、市場流通を軽視するものではない。市場流通としての重要な位置づけを明確にしたうえで販売の多元化を進める」(藤島教授)ことが全体として確認されたのではないだろうか。
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