◆経営概況
米・麦・豆類、施設園芸で売上高が増加
表1は、回答があった368法人を売上高第1位部門ごとにまとめたものだ。圧倒的に耕種部門が多いが、なかでも稲作が全体の41%を占めている。次いで花卉・花木、施設野菜、果樹となっている。
表2は、売上高第1位部門の平均売上高を示したものだが、全回答法人平均1億3595万円と1億円を大きく上回っているが、、稲作・麦豆作と施設野菜が8000万円台にとどまっている。
売上高規模でみると、2億円以上の法人が41(全回答の11.1%)あるのに対して、3000万円未満の法人が76(同20.7%)ある。
図1は、回答法人の収益の状況をみたものだが、「収益が十分確保されている」法人は13.8%、「損益がほぼ均衡している」は54.7%で、ほぼ7割の法人は存続可能な収益性を確保している。
図2は売上高の動向をみたものだが、「大幅に増加」と「やや増加」した法人が44%、「やや減少」と「大幅に減少」した法人が37%と増加した法人がやや多くなっている。
これを売上高第1位部門別にみると、施設野菜(増加した44.5%)、稲作・麦豆類作(同47.3%)で売上げが増加した法人の割合が大きいのに対して、露地野菜(減少した57.7%)、花卉・花木(同48.9%)では減少した法人の割合の大きさが目立っている。
図3は今後事業方針として重視する項目を聞いたものだが、「生産コストの引き下げ」「農産物の品質向上」「収量の向上」がいずれも50%を超えている。これらはいずれも既存農業生産部門の体質強化にかかわる項目であり、新たな事業領域への取組みを伴うものではない。一方、既存農業生産部門の拡大を意味する「栽培面積や飼養頭数の増大」、新規の農業生産部門の導入を意味する「新たな栽培品目や畜種の導入による複合化」で15%を超える回答があった。
また、農業生産部門以外の事業領域への取組みにかかわる項目では、「販売力強化」や「農産物加工による付加価値の創造」をあげる回答が多かった。
図4は、農産物生産以外の事業領域への進出状況を聞いたものだが、174法人(全回答法人の47.3%)で、農業生産以外の事業部門のいずれかに取り組んでいる。とくに回答が多かったのは「農畜産物直売」「農畜産物加工」だった。
◆販売活動
大規模ほど低い系統利用
表3は、主要農産品目について、それぞれの販売先別の販売割合をみたものだが、「生乳」では専門農協・同連合会が、「麦・豆類」ではJAに販売が著しく特化している。「果実」では、消費者や小売・外食業者との直接取引の割合が大きくなっている。
図5は米(196法人)について、販売先カテゴリー別に統合したものだが、JA・JA連合会への販売が42%を占めている。これを米の売上げ規模別に見ると、1000万円未満ではJAグループへの販売が50.4%と5割を超えているが、売上げ規模が大きくなるほど小売や加工・外食、生協、消費者への直売が増え、米売上げ5000万円以上でのJAグループへの販売割合は29.3%と3割を下回っている。
表4は、販売先を選ぶ際に重視する点を品目別に聞いたもの。多くの品目で共通して高い回答割合を示すのは、取引条件を意味する「価格の安定性」「取引の継続性」「価格水準」「決済時期」である。
そのなかでも多くの法人があげているのが「価格の安定性」や「取引の継続性」で、多くの品目で「価格水準」という回答を大きく上回っている。これはリスクへの対応を重視し、販路選択の安定性をもたらしていることを意味するだろう。
図6は、今後取引数量を増やしたい米の販売先を聞いたものだが、「直売所等での消費者直売」と「小売・加工・外食・生協等」がともに55%以上となっている。とくに米売上げ5000万円以上層では、「直売所等での消費者直売」との回答が85.2%と高い値を示している。
◆生産資材の購入
JAの購買価格評価向上努力が不可欠に
表5は、生産資材の購入先を聞いたものだが、多くの品目で共通しているのは、主な購入先として「JA・JA連合会」と「資材流通業者」をあげていることだ。また、農機や飼料、園芸用施設ではメーカーとの直接取引の割合も小さくはない。また、ホームセンターからの購入は園芸資材での5.6%がもっとも多く、他の品目では1〜2%の範囲にとどまっている。
表6は、生産資材について品目別に購入先の決定理由について聞いたもの。「価格」をあげる法人は品目にかかわらず多いが、その他の項目の回答割合は品目による差異が大きい。なかでも高い回答割合を示すのは肥料や飼料における「品質」、農機における「アフターケア」である。
表7は、生産資材購買価格とJA購買事業の利用状況との関連を飼料を除く品目でみたもの。JAが安いと認識している法人ではJA利用率が極めて高く、一方、資材業者が安いと認識している法人でもJAの利用が一定程度みられること、またほぼ同価格と評価する場合のJA利用率が品目にかかわらず7割に達することなどから、JAに対する一定のロイヤリティーが存在していることが分かる。
しかし、農機と飼料を除く品目で、JAが高いという回答が7割前後と高く、JAが安いという回答はほとんどみられなかった。このような評価が現実の価格差を反映したものか、それとも法人代表者の認識のあり方によるものかは検討する必要があるが、法人のJA利用率を高めるためには、購買価格に対する評価の向上にJAグループが努めることが不可欠といえるのではないだろうか。