卸から小売へ早変わり −ラオスの「タ・ラート」(1)
ラオス、正式には「ラオス人民民主共和国」は日本の近くにありながら馴染みの薄い国である。
インドシナ半島の中央部にあり、北は中国、東はベトナム、南はカンボジア、西はメコン川をはさんでタイ、北西をミャンマーに囲まれた内陸国である。
広さは日本の約3分の1で人口538万人の約7割、GDPの5割が農業という農業国である。
農産物はコメが作付面積の約8割と圧倒的でモチ米とうるち米が半々である。主食にはモチ米を蒸したのを1人分づつ蓋のついた竹の器に入れ、指で小さく丸めてオカズを付けながら食べる。日本人の口に合う美味い食事である。
ラオスの食品や日用品の流通は「タ・ラート」と呼ばれる小売市場が賑わっている。首都のビエンチャンには大きなのが5市場、その他に小さいのがいくつかあって市民は日常の買い物を、レストランや食堂、個人商店も材料の仕入れは此処ですましている。ビエンチャンの代表的なクヮディーンという小売市場は敷地が4ha、小売店は1コマが4×4mで800を越す小売店のうち野菜、果実、肉などの店が約200、日用雑貨などの店が約600あって文字どおり軒を並べて競争をしている。
ここには普段必要なものはおよそ何でもあり、食料品、衣類、履物、雑貨などの業種別にかたまっているが、空きが出ると新規の店が入るなどで24金のネックレスを売っている宝飾店の隣でコメを売り、その隣ではメコン川で取れた鯉やナマズ、焼鳥屋といった雑多な雰囲気がいかにも庶民の市場である。
変わった商品といえばラオスではバイクが庶民の足で、バイクの部品が新しく組み立てられる程たくさん売られている。
このような「タ・ラート」は地方に行ってもその街の規模にあわせて賑わっている。
日本で小売市場といえば食品と雑貨が中心の大きくてもせいぜい十数店程度のイチバであるが、ラオスのは「ショッピング・センター」といった方が分かりやすい。ただし、核店舗となる大型スーパーマーケットのない小売の集合体である
ラオスでは社会主義体制を維持しながら市場経済への移行をしており、小売市場は民間の業者による開発で進んでいる。
デベロッパー的な性格の会社が土地を市から借り、中心となる建物を建てテナントを集めてショッピングセンターを成功させている。
ラオスではもともとこのような「タ・ラート」が社会に定着をしていたが、市場経済、再開発、消費の拡大という流れにいち早く目を付けた民間の活力が行政より一足早く流通を支配したといったところである。
ラオスの農産物の流通についての多くの資料には青果物の卸売市場はないとされているので、どのようなことが行われているか興味を持って市場の関係者に聴いてみたら、「タ・ラート」の早朝、早いところは午前3時頃、一般的には5時頃から7時頃までが「卸売市場」としての取引が行われ、7時頃から一般の消費者が来ると同じ場所で同じ人、出荷をした農家や産地業者が、小売に早変わりをして売れるまで頑張る、大抵は11時頃までには売ってしまうとのことであった。(つづく)
(原田康)
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