ホリエモン氏の功績
ライブドアの70日騒動におけるホリエモン氏の功績は、日本の農業はこのような騒動を起こして右往左往する連中とは対極にあることをハッキリと分かり易い形で見せてくれたことである。
ライブドアは、1996年にオン・ザ・エッジという名前で六本木で創業、8年間に3回名前を変えながら時代の最先端技術を駆使したベンチャー企業、時代の寵児としてマネーゲームで次々と会社を買収して資金を作り今度はテレビに目を付けた。
一方のニッポン放送は1954年、といえば60年安保闘争の動きが顕在化してきた時期にマスコミ対策として財界の肝いりで当時の経済4団体が中心となって作った会社で、57年には同社が出資をしてフジテレビを設立したという歴史を持つ。
情報化時代のジャーナリストとして視聴率を誇っている両社が、なりふり構わず防衛策に翻弄した。
マスコミも学者、評論家もいっせいにホリエモン騒動をトップで追いかけ、世論としてはグローバルな金融の先駆者とまでホリエモン氏を持ち上げ、買収される側の脇の甘さを指摘した。
公開の市場に株式を上場すれば、証券市場という取引の場で投資家によって買収ということが起きるのは当然織り込み済みのハズである。ホリエモン騒動は、全ての投資家に対して公正な取引を保証するという前提で行われる証券市場の取引が、ルールどおりに行われたかの見解の相違程度のことである。
このような株買い占めによる会社支配の方法として対象を食糧にターゲットを当てることも当然起こりうる。
主要な農産物の生産、流通を独占的に支配するという仕掛けは、今回の騒動で見られたように短期間に巨大な資金を世界規模で集めるという現在の金融の世界であれば可能である。株の買い占めとは違うが、食糧支配としてはもうすでに遺伝子組み換え作物は特定の種子、農薬で世界の農産物をコントロールができるという段階にきている。
そこまでは行かなくても、農業に参入して株式会社の経営方法で先端技術、合理的な経営手法、資本投下によって利益の上がる産業であることを実証しようと手を挙げている企業が出ている。
農業を始めるには先ず農地の取得である。例えその企業の経営者は大真面目に企業的農業で実績を上げるモデルとなったとしても、株式会社は経営者の哲学だけではどうにもならないということをホリエモン氏は見せてくれた。
過小資本で利益の上がる企業を虎視眈々と狙っている投資家が仕掛ける方法は芸術的といわれるほど鮮やかである。何とかファンドが資金をいくらでも用意する。
当の企業が頑張っても親会社、子会社の株を買い占め経営権を握られることで動きは取れなくなる。
今回は仕掛けた方も仕掛けられた方も情報産業であったので、騒動の最中も一件落着した後も会社の事業は以前と同じ様に24時間相変わらずのお笑いを流している。
農業も、アメリカの代表的な農場経営の様に農地は買うなり借りるなりして、水も権利を買い、労働者を雇って経営をする方法であれば会社の買収劇があったとしても農業生産はそのまま続けられる。
しかし、日本の場合は事情が全く違ってくる。農業で利益を上げるためには条件のよい場所に広い農地というのが第1の条件である。このような土地が、ある日突然農業を止めたとなった時に残された土地をそのまま農業に使うことは考えられない。もっと手っ取り早く儲かる使い方をすることになる。一番無難な方法でも荒れ地にして放っておくことぐらいであろう。広いところの一画であればそれでもよいが、日本の優良農地は周りとの共同社会の中で存続ができる。これが我が国の歴史であり文化である。
大手町という都心のビルの地下に人口農園を作ってこれぞ最先端の農業であると評価をする時代である。株式会社という経営方式を採れば日本の農業が国際的な競争力を持った産業に脱皮できるという短絡的な発想がある。もちろん農業にも新しい技術、経営手法を取り入れ多様な経営形態が競争をすることで活気が出て全体の水準が上がる方法は当然必要である。
しかし、農地という一旦失った機能を元に戻すことは大変難しい日本の食糧生産の貴重な財産を、間違ってもホリエモン騒動のようなことに使われる条件を作ってはならない。(原田康)
|