明日から出来る農協改革の提案 ◆組合長は受付の後ろに
事務所の机の配置を替えることによって農業協同組合の体質も変わるという方法である。
農協の、本店も支店も入って一番便利なところに営農指導と販売の担当の机を置き、その後ろに組合長、参事、支店長の机を置く。その横に組合員が訪ねて来た時に腰をかけられる簡単な椅子を用意する。
何処の農協も一番便利なところに貯金のカウンターがあるので、営農指導と販売と同居をすることにする。組合員が野良着で長靴、地下足袋のまま組合長や支店長と世間話や、作物の具合、相場について話の出来る雰囲気を作ることで「農業協同組合」の仕事が出来るようになる。
合併をして大きな建物となると組合長の部屋は2階の奥の方で、あらかじめ総務か秘書の許可を取っておかないと部屋に入れないようなことになる。
ピカピカの部屋に大きな机と応接セットがデンとあると、長靴姿で「組合長景気はどうかね」とはいかない。
営農、販売の実務を営農センターでやっているところは、そこにも組合長、支店長の机を置いておく。組織が大きくなると管理規則、職務権限が優先をするので上に行くほど現場から遠くなり、実際の動きが分かりずらくなる。
農家の人が、特別な用事がなくても気軽に訪ね、お茶の一杯も飲みながら世間話をする、これが組合というものであろう。この忙しいのに冗談ではないというのが現実であるが、大切なことの順序を間違えるとしっぺ返しが来る。
連合会でも同じことが云える。全国連の大手町では長靴で「やあ、会長元気でやっとるかね」とはいかないが、東京に出てきた機会に組合長の仕事ぶりでも見ていくか、となれば上出来。経済連、県本部は農協と同じくらいの感覚で組合員が「近くに来たよ」といって気軽に立ち寄る雰囲気が欲しいものだ。
◆なにを優先させるか
農協は、地域の農業生産と、人々の暮らしのほとんど全ての分野の事業をやっており、地元のトップ企業である。地域振興計画も、農業分野はもちろんのこと、高齢化、福祉、健康、環境問題までを視野に入れた振興計画の事務局となっている。
関係市町村はもちろんのこと、大型農協では県との調整まで必要となる。これだけ広い分野の事業で全て100点満点はとても無理である。
どの分野の事業で高い得点を取るか、言い換えれば「この分野では決して他の企業に負けない」ことで社会的な評価を得るか、となればやはり農業生産・販売の分野であろう。
個々の組合員の規模は小さく、労働力も不足、自然条件、輸入品との厳しい価格競争という不利な条件のなかで、組合員農家が生産を続け、消費者、食品工場、外食産業も輸入品でなく産地のブランドを信用して優先して買ってくれる、このような元気な産地が成り立っているのは農協がよく面倒を見て組合員と一緒になって産地の拡大をしている、このような努力が農協としての得点になる。
組合長は、奥の方の大きな部屋に坐って会議と書類に埋まるのではなく、窓口の近くに座り農協に来る人と話をして、地元の産物を担いでトップセールスをする、留守中の仕事が止まらないようにするために常勤役員、参事がおられる。
農協、連合会や関連会社と競合関係にあるどの分野をとって見ても、ホリエモンの騒動のような喰うか喰われるかの世界である。農産物と加工品の大きなマーケットである外食産業は、外観は派手な宣伝と日本中どこでも展開しているフランチャイズ・チェーン方式で商売繁盛のように見えるが台所は火の車どころか火の気がないくらいで、コストを削るため外部へ出せる仕事はほとんど全部アウトソーソングとなり、メニューは立派であるが、アルバイトが電子レンジでチンとやってマニュアルを見ながら盛り付けをしている。
このような業界に原料の農産物を売り込むのは、余程の努力と商品を用意しなければ相手にされない。
系統の内部と役所だけに通用をする経営感覚ではとても太刀打ちできない。株価に毎日一喜一憂しなくても済むだけでも上場企業のトップにしてみたらうらやましい限りだ。
どこの企業もトップは忙しく体力勝負である。業績に差が出るのはトップの姿勢と時間の使い方である。(原田 康)
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