市場競争にほんろうされ… カンボジア(2)
◆市民の生活
プノンペンでは朝まだ暗い5時過ぎにはもう働きに出掛けて行く。電車がなく路線バスもほとんど見かけない。
庶民の通勤の足は自転車かバイクであるが、バイクの後ろに乗せるバイク・タクシーが一番の足となっている。乗せるのは一人が多いが、大人を二人、三人と乗せて走っている。
カンボジアではバイクは免許が不要である。更にバックミラーも付けていない。
通勤時間には車、バイク、自転車、バイクの荷台を改造したツク・ツクで車の洪水となるがこの間をバイクがミズスマシのように走っている。
夕方になると、食べ物の店といっても街角の屋台のようなものが沢山店開きをする。小売市場も夕方から買い物に来る人で賑わうが、電気代が高いので薄暗いところでの商売である。安全・安心、トレーサビリテイの国の対極である。
プノンペンから車で1時間半くらいの郊外では、国道沿いには電気が来ているが少し入るとまだ電気無しである。テレビのアンテナがあるので聞いてみたら、白黒テレビをバッテリーで見て、朝道に出しておくと業者が充電をして夕方配達している。
◆農産物の販売の仕組みが出来ていない
首都プノンペンから車で約2時間南に行くとベトナムとの国境に出る。この途中が11月から4月頃までの乾期には水が引いて野菜の主産地となる。野菜を作っている農家で販売の方法を聞いた。
収穫した野菜を30〜50キロくらい入る竹のかごに詰めて、乗り合いのトラックで深夜の11〜12時頃プノンペンの小売市場の隣にある卸売りをする広場に持っていき、小売商と値段を決め、品物を渡し朝の6〜7時頃まで仮眠をして売った店に代金の回収に行く。
夜中に決めた価格で払ってくれることもあるがたいていは品物が悪い、売れないといって値切ったりしてまともには払ってくれないことが多い。
これは親父の時代からこういう習慣なので仕方がない。これでもまだ産地で産地商人に誤魔化されたり、買いたたかれるよりましななのでプノンペンまで売りに行くと言っていた。
何ともやりきれない話である。行政の無力を実によく現している。
プノンペンから北東へ約150kmのところにコンポン・チャームがある。野菜、果実の産地でカシューナッツの産地と加工工場を見た。
カシューナッツの実はちょうどそら豆くらいの大きさで形もよく似ている。固い皮を少し焦げるくらいに焼いて殻を割り、中の乳白色の実を出して選別する。真空パックに詰めて出来上がりである。
工場では400人くらいの女子工員が全部手作業でやっている。賃金は出来高払いで平均が一日1.0〜1.5ドルとのことである。農村地帯の日当は農作業を含めて様々な作業があるが、だいたい一日1ドルが相場となっている。
カシューナッツはベトナムでも生産、加工をしており産地商人が原料のカシューナッツを両国の相場を見て天秤に掛けた売り買いをしている。
さらに製品はアメリカに輸出をしているが、アメリカのマーケットでも競争相手になっているとのことであった。
ということは、資金力、情報収集、輸送等のインフラはカンボジアが大幅に遅れているのでここでも農家が原料を買いたたかれるという構図になっている。
「市場経済」の競争も柔道のように階級制を取らないと軽量級はいつも投げつけられて勝ち目がない。 (原田 康) |