平成16年から具体化した米政策改革では、19年産から「農業者・農業団体が主体的に需給調整を行うシステムへの移行をめざす」としていることから、農水省は新システムへの移行を検証する検討会を2月3日に立ち上げた。
新システムでは、生産目標数量の設定、配分については、国など行政が行うのではなく、需給見通しなどの情報に基づいて農業者、農業団体が主体的に実施することになっている。
この新システムへの移行について農水省は、▽JAなど生産方針調整作成者が客観性、透明性のある方法で生産目標数量を設定できるか、▽農業者へ需給や品質評価に関する情報が適切に提供されるか、▽生産調整非参加者の生産調整参加など需要に応じた生産への取り組みをどう進めるかなどのほか、▽水田農業の構造改革が推進されるか、▽国、地方公共団体の役割はどうなるのか、といった点を論点として示した。
そのうえで今後4回ほど検討会を開催し7月には19年産から移行する結論を得たいとの考え方を示した。
■米政策全般の検証を
この農水省の方針に対してJAグループ委員からは疑問の声が相次いだ。
JA全中の山田俊男専務は、農業者、農業団体が主役となるシステムへの移行は米改革が描いた「米づくりの本来あるべき姿」に向うためのあくまで手段、と指摘。米改革によって打ち出された、担い手の育成による主体的な計画生産と経営所得の安定、水田の有効利用、米の需給と価格安定など、幅広く実態を分析することが大事だと強調し「19年産からの移行を前提に生産目標数量の配分などを検討するのではなく、米政策全体の検証の場とすべき」と提案した。
また、18年産の作柄や生産調整への取り組み状況が不明な7月に結論を出すことを固定せず検討する課題も含めて弾力的な検討会運営を求めた。
奥村幸一ホクレン副会長は「生産調整に参加した担い手が想定もしない米価下落にあっているのが実態。稲得、担経というセーフティネットも機能していないことをよく見極めるべき」。木村春雄JA宮城中央会会長は「農業団体だけで計画生産をしても米価が下落すれば納得できないと参加しないことにもなる。水田ビジョンは市町村行政と一体で進めているが、需給調整だけJAでやれというのは違和感がある」。園田俊宏JA熊本中央会会長は「米改革を議論した当時と条件が違う。よく検証しないと現場が混乱する」などと指摘した。
また、山田専務は東京、大阪の商品取引所に申請されている米の先物取引について「生産調整や国境措置を行っている現状では導入すべきではない、という生産調整研究会のとりまとめにそって不許可の判断をすべき。認可すれば米改革を根本から否定することになり、19年産からの主役システムの移行は無理になる」と強調した。
議論を受けて生源寺眞一座長は、生産調整非参加者の実態、地域協議会の課題などを次回以降明らかにして検討を進めていくと話した。次回は3月28日。
【新たな需給調整システムへの移行の検証に関する検討会委員】
▽生源寺眞一東大大学院教授(座長)
▽野村一正時事通信解説委員(座長代理)
▽奥村幸一ホクレン副会長
▽北村歩(有)六星生産組合社長
▽木村春雄JA宮城中央会会長
▽鈴木忠栃木県高根沢町産業振興課主幹
▽園田俊宏JA熊本中央会会長
▽木勇樹農林漁業金融公庫総裁
▽谷健二福岡県農業振興課長
▽藤原道生兵庫県農業経営担当課長
▽山田俊男JA全中専務
▽吉田長久岩手県矢巾町農林課長
▽渡辺信夫新潟県農産園芸課長
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