●7月に需要実績のみで決定 −生産目標数量
農水省は5月30日に開いた「新たな需給調整システムへの移行の検証に関する検討会」の第3回会合で、新システム移行にあたっての生産目標数量の決め方や時期などについて基本方針を提示した。
生産目標数量の決定はこれまでは過去の需要実績や作柄をもとに、秋に決定し、年明けからJAなどを通じて生産者に配分されてきた。
しかし、農水省はこの方式では転作麦の播種がすでに終わった後に米の生産目標数量が配分されることになるため、決定時期を前倒しして、7月段階で翌年産の生産目標数量を決める必要があるとした。
また、農水省は19年産から新システムに移行する方針だが、十分な準備期間を確保するためにも、この夏に生産目標数量など決めるほか、ルールについて明確にする必要があるとしている。
とくに都道府県別の生産目標数量については、過去の需要実績をもとに需要見通しを算定する方針で、19年産からはその算定に反映させるウエイトを10割とする方針を打ち出した。18年産ではそのウエイトは9割となっている。
ただ、需要実績は18年産では過去6年のうちの4年平均(最高年・最低年を除く)の実績を採用しているが、今後、この需要実績の採り方については夏までに検討する必要があることを示した。そのほか需要見通しを上回って生産された数量を翌年の需要見通しにどう反映させるかも課題とした。
●集荷円滑化対策で返還制度
また、集荷円滑化対策では、18年産からは過剰米処理などに必要な支払いが終わった時点で基金に残額がある場合は、生産者拠出金を返還する方針を示した。
集荷円滑化対策は、豊作にともなう過剰生産分に限って生産者が区分出荷して処理することへの支援策。生産者は10アールあたり1500円を拠出して加入。国は60kgあたり3000円の融資を行い、そのほか生産者拠出金を財源として対策が発動された翌年に60kg3000円の生産者支援金が支払われる仕組みになっている。
17年産では約138万人が加入。制度は16年産から導入されたが、過剰米対策が発動されたのは17年産が初めてで豊作による過剰分約8万6000トンのうち、約7万6000トンが区分出荷された。
16、17年の2年間で積み上がった基金は、生産者の拠出金が約320億円、融資のための国の無利子貸し付け金が150億円で合わせて470億円となる。このうちから17年産の過剰対策の融資分として38億円が支出されたため、17年度末には約430億円の残高となっている。
国からの融資に加えて生産者が受け取る支援金は18年産の生産者拠出金が財源となるが、17年度と同様の加入であれば160億円の基金がさらに集まると見込まれ、一方、支援金総額は40億円程度となり、残額が出ると考えられることから生産者に返還することにしたもの。農水省は生産者の負担を軽減する措置としている。
ただ、集荷円滑対策の加入率は主産県でも依然として低いところもある。こうした産地が過剰米対策発動の対象となる事態となれば、必要な区分集荷量を確保できない可能性もあり、行政、JAグループにとってもさらに加入促進が課題となっている。
●計画生産を担保できるか
この日の検討会では、生産者・生産者団体が中心になる米の生産調整について行政の関与を求める声も強かった。
「現場では、これからはJAが中心になるものという意識があるようだが、農地関係の調整事務などJAでは難しい。担い手中心に農政がシフトすれば担い手以外の米生産者も増える。計画生産は行政が関与しなければしっかりしたものにならない」、「生産調整に参加しない一部の生産者がいることが価格下落を招いているのではないか。非参加者をどう参加させるか根本的な解決が示されていない」、「需要情報の伝達と生産者の自覚を求めるだけは難しい。計画生産のための大枠を政策として打ち出すべき。米しか作付けできない地域もあり、他の作物生産対策や過剰米対策が必要」などの意見があった。
とくに生産調整の未達県について、翌年の生産目標数量から過剰分を作付けしても都市近郊県などでは非参加者が例年通り生産し出来秋に販売してしまうとの懸念も出た。「いずれ生産調整未達成分も需要に組み込まれてしまうことにならないか。そうなれば米の出回りの遅い主産県の米が価格低下や売れ残りなどで経営が困難になる」とJA全中の山田専務は強調した。 次回は6月26日に開催される。
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