◆国の具体的支援措置は提示されず
6月26日、農水省は第4回「新たな需給調整システムへの移行の検証に関する検討会」を開催し、これまでの議論をまとめた論点の整理案を提示した。
このなかで農水省は、客観性・透明性の高い方法で生産目標数量を設定・配分することができるのか、需給や品質評価などの情報が農業者に適切に提供されるのか、といった論点について、都道府県段階、市町村段階やJA段階で取り組みが進んでおり、移行への条件は整ってきているとした。
また、地域協議会の運営の透明性の向上や地域の担い手の意向の反映を図って行くこと。生産調整非参加者をどう取り込んでいくかなどが課題だとした。
しかし、国や行政の具体的な生産調整支援措置は今回は提示されず、次回に提示するとした。
これに対して生産者側委員からは、農水省が提示したデータは「移行することを前提にした(農水省に)都合のいい分析をしており不十分」(冨士重夫JA全中基本農政対策部長)。
16、17年産米でも過剰米はあったが「影響を与えなかったのは国が40万トン吸い上げたからだ。国の買い上げがなく過剰米が出たときには市場は大混乱を起こす」(奥村幸一ホクレン副会長)。「生産調整に取り組んでいる人にマイナスにならないようにしなければならない」(富士部長)など需給・価格安定対策が不可欠との意見がだされた。
また木村春雄宮城県中央会長は、市町村合併が進むなか、「JAの人的負担が大きく、JA間でも格差がある」と問題点を指摘した。
◆担い手は地域農業のリーダーとして範を示すべき
担い手への傾斜配分強化意見に反論も
(社)日本農業法人協会は文書で新システム移行に関する「意見」を配布した。このなかで同協会は「生産調整の配分に当たっては、思い切って担い手と非担い手等の間の傾斜配分を強化すべし」と主張。「現行の5%程度の格差ではインセンティブにならない。非担い手50%、担い手75%等が可能になる」ような取り組みが必要だとしている。
さらに「認定取り消し等のペナルティを課すことよりも、栽培品目を限定しないような交付要件等にすることで、生産調整に参加するインセンティブを高めるべき」とした。
これに対して冨士部長は担い手への傾斜配分強化は論理が逆で「担い手は、地域の農業生産を担うリーダだから計画生産をキチンとやっていく、という範を示す役割と責任を果たすことで、地域の理解を得られるのではないか。認定の取り消しもキチンとやるべきで、それが全体の生産調整の実施につながる大きな手立てだ」と批判した。
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