有機農業推進法制定をめぐり全国有機農業団体協議会(金子美登代表、以下「全有協」)は9月30日、埼玉県小川町で農水省幹部職員17名の参加のもとに現地意見交換会を開いた。有機農業の現場の声や取組みを通し、実際の政策に反映してもらうのが目的。
現地視察としては、金子さんの有機を実践する『霧里農場』(比企郡小川町)および在来大豆を使用し『とうふ工房』(同ときがわ町)に夢をかける渡邉一美さんの工房をそれぞれ視察した。
金子さんは水稲1.5ha、畑作1.5ha、林業2.0haを営む。畑作では、年間約60作物を作るが、土づり、適期栽培および輪作がポイントとなっている。トラクターも廃食油から作ったVDF(ベジタブル・ディーゼル・フューエル)(注)で動いていた。
有機栽培米は一筆一筆ではなく、「地域全体で考えていかなければならない」という金子さん。「品目横断的経営安定対策では、担い手を中心とした集落営農だけが支援されることから心配していた。推進法に対して期待しており、いっそう地域農業づくりに貢献していきたい」という。
一方、渡邉さんは昭和54年から「おとうふ屋さん」の道に入った。大手スーパーの価格競争や遺伝子組み換え食品問題の渦の中に巻き込まれれるが、地元産大豆との出会いがこれを救った。「手間ひまかけ、原料のしっかりした『とうふ』を消費者は求めている」という。
年間約90トンの大豆を使用するが、そのうち約80〜90%が県内産で、さらにその半数近くを近隣地区の生産者や生産者グループで占めている。「全量買い上げ、一括支払いを前提として、生産者との話し合いで再生産可能な価格の設定が大切」だという。
【農水省生産局・竹森三治農産振興課長の話】 環境保全型農業への取組みの中で有機栽培は1つの手法だが、栽培の広がりが面にならないのは技術的に安定度が少ないため。この安定化に向け技術的に組み立てていくために行政として何ができるかが課題。推進法に対して、行政としてどう取組んでいくのか模索している。
(注)てんぷら油やとんかつ油の古くなったものをリサイクルしたエンジンオイル。染谷商店(東京)という油の回収業者が開発した。
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(左)有機栽培は土づくりから。金子さんの畑を視察する参加者たち。
(右)ブロックローテーションで行われている水稲と大豆の圃場。来年は、左の大豆圃場が水稲に切り替えられる。 |
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